住宅会社に意識改革を迫るストック重視
中古住宅が売るに売れない弊害はそればかりでない。1969~2013年の累計住宅投資額と13年時点の住宅資産額を比較すると約500兆円の開きがあり、この間に国内総生産(GDP)にほぼ匹敵する「国富」が吹き飛んだとする国土交通省の試算もあるほどだ。官民挙げたオールジャパン体制で中古住宅流通の促進に動き出したのも、こうした弊害を改善し、ストックの有効活用を図る狙いがある。
国交省は、今後10年間の住宅政策について国の基本方針を定める住生活基本計画を策定し、16年度からスタートすることを目指し、今年4月に国交相の諮問機関である社会資本整備審議会で議論を開始した。この中には「フローからストック」への政策転換が明確に打ち出される方向で、中古住宅流通促進もその大きな柱になる。
自民党は5月26日に中古住宅市場活性化に向けた提言をまとめた。提言は宅地建物取引業法を改正し、専門家による住宅の劣化状態の診断の徹底を図り、仲介販売業者による販売時の説明を義務付けることを求めており、建20年超で資産価値ゼロとみなされる商慣習の是正を目指している。また、中古住宅が安心して売り買いできる不動産業界ネットワークを通じた販売情報の開示の透明化も図る方向だ。
こうした取り組みは、既に民間サイドで動き出している。住宅大手10社で組織する「優良ストック住宅推進協議会」は、「住宅販売士」の資格を持った専門家が住宅を適正に査定し、販売する独自の仕組みを確立し、中古住宅流通促進に向けた取り組みを本格化し始めた。住宅躯体、内装・設備機器の流用耐用年数(償却期間)をそれぞれ50年、15年とした査定基準も設定する一方、「総額表示」の商慣行の是正を目指して「土地・建物価格の分離表示」を主張している。
住宅関連事業で19年3月期に2兆円の売上高を目指すパナソニックは7月1日、中古住宅仲介とリフォームのワンストップ化を図った新サービスを開始するなど、民間の取り組みは加速している。ストック重視は「新築偏重」できた住宅大手にも180度の転換を迫るだけに、自らの意識改革も求められる。