どこに行っても女性は目立つ
北上河川下流事務所に勤めた後は、仙台にある港湾空港部、霞が関の本省河川局の河川環境課の係長、さらに広島にある中国地方整備局の太田川河川事務所などを経て、現在のポストに移りました。
国交省の本省の職員として働くことの醍醐味は、東京と地方とを行ったり来たりしながら、経験を積んでいけることです。自分が河川に関係する仕事を長く続けいくのであれば、その中でそれぞれの地域の人々の思いを常に聞きながら、国土と地域の未来を考えられるようになりたいです。
国交省は土木の仕事が中心ですから、ご想像通り女性が少ない職場です。工事の現場を担うのは建設会社ですから、どこに行っても女性が目立ちますね。私は高校も大学も理系だったので、そうした環境に慣れていたのは幸いでしたが、「女性だから」といった視線はどの部署でも必ずありますし、何かと言えば「女性の視点で」「女性の感性で」と言われて困ってしまうことも多いです。
それから女性の技術職はこの約10年間でだいぶ増えてきてはいるものの、部署が変わると私の世代でもまだ、「女性初」の役職になることがあります。昔は土木職で事務所のトンネル工事の現場に女性の技官が入ると、それだけでニュースになったりしたそうですから、私より上の世代の先輩たちには相当なご苦労があったと想像します。その意味で自分の世代にもう1つの役割があるとすれば、それは先輩たちが開いてくれた道をさらに広げ、しっかりと踏み固めていくことなのだと思います。
そんななか、いまはまずミズベリング・プロジェクトを通して、川の素晴らしさを少しでも多くの人たちに伝えていきたい、というのが私の思いです。
川の流れが作り出した日本の国土は、水害と常に隣り合わせの国土でもあります。でも、まずは川の良さを知らなければ、川の怖さも分からない。川というものが積み上げてきた歴史、地域にとっての価値に目を向けることは、私たちが今後、自然とどう付き合っていくかを考えることでもあります。これからの川の整備とはどうあるべきという議論も、その中で深めていくべきものです。
河川行政に携わる人々の川に対する見方は、まだまだ事業優先のところがあるように私には思えます。だからこそ、どんな部署に行っても、川を身近にするために何ができるかを考えていきたいですね。
●手放せない仕事道具
スーツ。いつ、誰の前に出てもいいように、きちんとした身だしなみを心がけている
●ストレス発散法
旅行、自然の中に身をおくこと
●好きな言葉
感謝
立命館大学大学院修了後、国土交通省に入省。中国地方整備局における河川事業担当等を経て、2014年9月より水管理・国土保全局河川環境課においてミズベリング・プロジェクトや河川環境教育等の企画立案を担当。
稲泉連=構成 村山嘉昭=撮影