水害の現場で知った仕事の重み
国交省の土木職には、大きくは道路、河川、港湾という3つの流れがあります。平成16年に入省した私が、1年目に配属されたのが河川の事務所でした。震災で大きな被害を受けた石巻市の北上川下流河川事務所。調査設計課という部署です。
ここでの最初の1年間が忘れられないのは、国交省の役人という人たちが、普段どのような責務を担っているのかを実感する出来事があったからです。入省して3カ月後の7月、新潟県と福島県で大きな被害が生じた豪雨災害がありました。信濃川水系の五十嵐川や刈谷田川などの堤防が決壊し、16名が亡くなった水害でした。
この水害の発生後、事務所の課長に「現場を見に行って来い」と言われたんです。新潟で私は初めて水害の現場を歩き、堤防の決壊箇所で懸命に続けられる復旧作業、水が引いた後もひどい臭いと埃と廃棄物が残る町を目にしました。
たった1つの災害が、いかに長く人を苦しめるものなのかを知り、私は国交省の最も大きな仕事のひとつは人の命と財産を守ることなんだ、と初めて肌で感じました。河川事業というのは、これほどまでに責任の重い仕事なのだという思い。国交省の職員はそうやって実際に現場に携わることで、それぞれが自分たちの仕事の意味であるとか、重みを知っていくものなのですね。