「ちょっと無理かも」がキャリアの分かれ道
旅行窓口に長くいた私は、そうした厳しい現場での経験がこれまで不足していました。でも、それが最初は恐れていたことであっても、実際に体験すると仕事というのは自分が「ちょっと無理かもしれないな」と思うくらいの困難を乗り越えることで、初めて力が付くんだということを実感するものなのですね。
その意味で私が学んだのは、やり遂げられるか自信のない仕事を任されたとき、「ちょっと難しいけれどやってみよう」と思うか、「私には無理だ」と思うかというところにキャリアの分かれ道があるんだということです。その選択によって人生の充実度もずいぶんと変わってくる。
だから、男女に関係なく仕事に不安や迷いを抱えている後輩に言っているのは、「あなたは自信がないかもしれない。でも、この人には絶対できないという仕事は、そもそも回ってこないんだよ」という言葉です。どんなに自分には難しそうに見える仕事でも、周囲があなたにはきっとできると思っているから、頼まれる。今の自分を信じられなくても、周りの人を信じてチャレンジしてみなさい、と。
もし迷ったまま前に進まなければ、次の世界は見えてきません。私は助役の後に国立駅の駅長になりましたが、駅長という仕事に対する憧れも、助役を経験して始めて抱き始めた目標でした。若い人たちを伸ばし、成長させる役割を担う区長や駅長という立場になって、とりわけ強く意識するようになった思いですね。
●手放せない仕事道具
制帽。駅長などの役職にかかわらず、現場の必需品。
●ストレス発散法
音楽好きなので、社内オーケストラに所属して、バイオリンを弾いています。職場を超えて、日頃様々な仕事に取り組んでいる気の合う仲間たちと練習に励むのはとっても楽しいです。
●好きな言葉
誠実
久保素弥子(くぼ・すみこ)
山梨県出身。1990年入社。東京駅、広報課などの勤務を経て、2000年に八王子駅、続いて国分寺駅の助役に。その後は人事関係、お客さまサービス関係の業務にも携わり、11年中央線国立駅長に就任。14年5月より現職。大学講師の夫と2人暮らし。
稲泉 連=構成 向井 渉=撮影