26の資格を持つ人をインタビュー

さて、ここで本連載の最後を飾るにふさわしい、数多くの資格を取った方にご登場いただきましょう。

新栄不動産ビジネス執行役員の藤野雅一さんは、1950年生まれ。

国際基督教大学教養学部社会科学科を卒業。ゼネコン勤務から不動産会社に転職した経験をもち、同社に入社したのは2010年。エネルギー管理士をはじめ1級電気工事施工管理技士、1級建築施工管理技士、1級施工管理技士、第3種電気主任技術者など、文化系出身なのに理工系資格を含め26もの資格を有しています。

「61歳の時には建築物環境衛生管理技術者(いわゆるビル管)を、62歳では一級間工事施工管理技士を取得しました。年齢と資格取得の勉強はあまり関係ありません」と藤野氏。両資格は国家資格であり、12年に取得しました。

「入学試験と資格試験とは違います。資格試験は、基準点をクリアーすればいいのです。入試のように満点を目指したら、難しくなります。そうではなく、基準点から“何問は捨てられる”と考えるべきなのです。資格試験にも無茶苦茶難しい問題は出題されます。しかし、簡単な問題と配点は変わりません。だとすれば、難しい問題は捨ててしまい、わかる問題を確実に答えていくべきなのです。コツがあるのです。入試のような相対評価ではなく、絶対評価なのですから」

では具体的な勉強方法は、そして準備期間はどのくらい設けたのでしょう。

「準備期間は長くて半年です。それ以上長いと、集中できなくなる。勉強方法は過去問をやるだけ。通勤時間が往復で30分あるので、ここを利用します。座れなくとも、吊革につかまり、ひたすら読む。重要なところには、マーカーでなぞりますがノートに書いたりはしません。基本は暗記。夜、同僚などから酒の誘いがあったら、断らずに行きます。サラリーマンは人間関係が基本ですから。そして、飲んだら、決して勉強してはいけない。読んでも頭に入りませんし」

「ビル管を取得するなら、“10年分の過去問を3回読め”、と社内で訴えています。また、試験では計算問題が複数出題されますが、手をつけてはいけない。時間を取られるからです。配点は変わりません。わかる問題を確実にやっていくことが重要です」

資格取得で独占できる業務を得て、また広範な知識も得て、会社の業績に貢献した藤野氏。入社3年目で執行役員兼技術開発部長に抜擢されました。

「資格取得で出世したり、高い報酬を得られるようになったのではなく、あくまでも実績によってです。実績を残すためのツールが資格です。本給よりも成果給がいまは大きいです」と藤野氏。

20年以上前のことだが、ゼネコンから不動産会社に転職を考え、まずは宅建を取得したそうです。業務独占資格の宅建をもっていたことは、不動産会社に転職する前提だったでしょう。

ということで、これで終わりです。読んでいただいてありがとうございました。

最終回の結論>
・多くの会社は、社員の能力開発を進めようとしている。その手段として、資格取得は有効と考える会社もある。
・資格取得にはコツがある。期間や方法など効率的に勉強すべし。
・資格試験では難問や計算問題は、場合によっては捨ててしまえ。
・資格を取得し、スペシャリストで生きる道もある。
・60歳を過ぎても資格は取れる。そして、業務独占型資格を取得すれば、高齢者でも働く道は開ける。