活用を考えなければ資格は「紙っぺら」

ただし、資格と業務が明快に直結している業界はそれほど多くない。営業部門では「数字がすべて」ということもあるだろう。だからといって、「営業だから資格は無駄だ」と決めつけるのは早計だ。むしろ、自分に付加価値をつけるレバレッジ(てこ)効果が期待できる。

たとえば「簿記検定」なら取引先の経理の相談に乗れる。また「中小企業診断士」ともなれば、本格的な経営相談も可能になる。「ビジネス実務法務検定」など法律系の資格の知識があればコンプライアンス(法令遵守)についてのアドバイスもできるだろう。

営業の仕事には必ず顧客が存在するのだから、その顧客の役に立つ資格を目指せば、その信頼関係が間接的に売り上げへとつながることになる。資格を既存の狭い枠組みで考えるのでなく、「この資格を取ればこう使える」という視点が必要だ。それが欠けた資格はただの紙っぺらにすぎない。

さらに、もう一つの視点として、「オンリーワン」になれる専門知識やスキルの取得は社内競争において決してマイナスにはならないことが挙げられる。特に女性の場合は、結婚や出産、育児がキャリアのブレーキになりやすい。このときに、誰かと交代可能な人材では簡単に退職に追い込まれてしまう。そうならないためには、交代不可能なオンリーワンの人材になる必要がある。社内を見回し、誰も手を付けていない分野に手を出してみるのがいいだろう。

職場環境によって異なるはずだが、一般論としては国家資格に昇格したばかりの「知的財産管理技能士」が狙い目といえる。また個人情報保護や情報セキュリティ、環境保護系の資格や検定、そのほかコーチングなどのヒューマンスキル系も有望だろう。

どうにも見当がつかないなら、とにかく「なるはや」で取れる資格のなかから興味の持てそうなものを目指すといい。資格取得がきっかけとなって興味や関心が広がり、別の関連資格を知るという形で発展していけるからだ。

大不況といって首をすくめていても、クビになるときはなる。どうせそうなら、資格をレバレッジにしたオンリーワンを目指そうではないか。そうした努力と積極性のある人材を、会社は簡単にクビにはしないはずだ。

(いずもとけい=撮影)