“女性らしさ”からの解放
オペレーション部に配属され、実際に開発から工場でどのようにモノができるのかを見られ、メーカーを選んでよかったと思いました。加えてうれしかったのが、女性らしさを要求されなくなったことでした。人事部にいたときはなんだかんだと言っても「女性らしい発想」とか「女性目線での企画」を求められたのですが、モノづくりの場で大事なのは品質の向上、生産の効率化、コストの削減といった、まったく男女に関係のないものです。とても解放された気分でした。
94年からは課長として生産管理のベテランの中に入って仕事をすることになりました。ここでは現地と日本の工場をできるだけ直結させる新しい取り組みを始めました。両者の間で本社がメッセンジャーボーイを務めるよりは現場同士が直接やり取りしたほうがいいと会社は考えたのです。そのために思い込みも含めて今までのやり方を変えていかなければいけません。このとき上司の部長(現・野路國夫会長)からデータで人を説得する方法を学びました。
抽象的な話はまったくしない部長で、「生データを見せてみろ」と言う人です。例えば油圧ショベルの仕様をお客様が何から何までフルチョイスできるのが会社のレベルの高さであると思われていましたが、部長はデータを示しながら「お客様にはどうしても譲れないものはあるが、すべてがそうじゃない。丹念に見ていれば売れ筋のパターン化ができる」と思い込みの払しょくを図りました。