プライベートタイム不足というカベ

放課後児童クラブの開所時間を延長するのであれば、質の問題がいっそう重要になります。夜の時間は、家庭にいるのと同じくらい落ち着いて過ごせる環境をつくる必要があるでしょう。

それができたとしても、問題は片づきません。

放課後児童クラブにいる時間が長くなれば、家庭で過ごす時間の不足という問題が起こってきます。

小学校に入ると、多くの保育園親は「子ども自身にしてもらわなくてはならないこと」がふえることに驚きます。明日の準備、宿題 etc.

だんだんに子ども自身でできるようになるのですが、しばらくは手助けが必要です。音読の宿題は親が聞いてあげなくてはいけません。学校で指示された工作の材料も、何に使うのか子どもの話を聞いてそろえます。

多忙だと、つい親が先回りして指示出ししたり親の手でやってしまったりしがちですが、それでは子どものやる気が育ちません。

時間がかかっても子どものペースでやってもらわなくてはなりません。

低学年のうちは笑える失敗談がいっぱいできます「あらー。気がつかなかったね」といっしょに笑って受け流していいと思います。ただ、子どもが学校ですごく困ってしまわないように最低限のフォローを親がしてあげることは必要です。すごく困っていないかどうかは、子どもの話を聞いていないとわかりません。それも、笑顔で、説教抜きで聞いてあげて、頑張っていることはほめてあげられれば、なおいいと思います。

そう考えると、親子が家庭で過ごす時間は、保育園時代よりも必要かもしれません。

でも、それもほんの数年間です。

やがて子どもは自立して、親がかまうのをいやがるようになります。放課後児童クラブがなくても、行きたいところに行き、しなければならないことをぬかりなくできるようになるでしょう。

それまでのガマンと思って、小1のカベは力ワザではなく、ちょっと肩の力を抜いて回り道をしながら乗り越えるのが正解ではないかと思います。

それができるように、父親も母親もワーク・ライフ・バランスがとれる社会にしていかねばなりません。

安倍さん、「小1のカベ」打破のために、よろしくお願いします。

保育園を考える親の会代表 普光院亜紀
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経てフリーランスライターに。93年より「保育園を考える親の会」代表(http://www.eqg.org/oyanokai/)。出版社勤務当時は自身も2人の子どもを保育園などに預けて働く。現在は、国や自治体の保育関係の委員、大学講師も務める。著書に『共働き子育て入門』(集英社新書)、『働くママ&パパの子育て110の知恵』(保育園を考える親の会編、医学通信社)ほか多数。