「女性ならでは」というプレッシャー

大和ハウス工業 横浜北支店 集合住宅工事課の日下淳子さん。現場監督として、賃貸住宅の工事現場を担当。

現場での仕事をうまく管理できるようになってきたのは、入社して1年くらいが経った頃のことでした。

当時の私は「とにかく現場に入ったら自分のできることをするしかない」と心に決めて、掃除や片づけばかりをしていました。本来、そうした清掃作業も含めて仕事をお願いしているわけですから、上司からすれば「それはうちの仕事ではない」という思いもあったかもしれませんが、そんなことを言ってはいられませんでした。

建設現場では工程のスケジュールが厳しく管理されているので、期日が差し迫ってくると清掃が行き届かず、切った板がそのままになっていたり、釘が落ちていたりする場合もあります。それを率先して片づけていけば、職人さんたちも作業がしやすくなるのは間違いありませんし、作業の安全性を高めることにもつながるはずですから。

それからもう一つ、私には現場の掃除にこだわる理由がありました。あの頃はまだ女性の現場への進出が社内でも始まったばかりだったので、「女性ならでは」と思われるような付加価値を暗に求められる雰囲気があったんです。

なので、同期の男性社員と同じレベルの仕事ができても当たり前、それ以上に何かを現場に付け加えなければ、この先のキャリアを生き残っていけないかもしれない、というプレッシャーを感じていました。その一つが現場をとにかく整理整頓して、上司や先輩に「日下さんの現場はきれいだね」と言ってもらうことだったんです。