変わろうとはしているが、変われない

とはいえ、中根氏は早くも60年代に、縦社会では契約精神が欠如しやすく、目的や責任感の共有がしにくい上、感情的な人間関係が重要視されがちだと、マイナス面を指摘しています。

しかも、同じ組織の中にどっぷり浸かってしまうため、違う環境で自分を試してみるという体験が乏しく、行くところまでいかないと、変化を起こせない弱さがある。

順番が来て上に立つ仕組みなので、幹部は無事に自分の任期を過ごせばいいという発想になりがちだとも言っています。

もっとも、そうした反省を踏まえ、最近の組織は従業員の自立意識を高め、業務遂行スピードを上げるためにも、フラット化、もしくはアメーバ化する方向に向かっています。

多くの組織が、縦社会による組織運営は、もはや時代遅れだと認識したのでしょう。

ただし、長年、縦社会による社会集団や組織運営になじんだ男性陣は、たとえ組織の構造が変化しても、序列を重視した上意下達のコミュニケーションがいまだ骨身に沁みついています。だからこそ、能力や仕事の中身以上に肩書に拘るのです。

佐藤留美
1973年東京生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年、企画編集事務所「ブックシェルフ」を設立。20代、30代女性のライフスタイルに詳しく、また、同世代のサラリーマンの生活実感も取材テーマとする。著書に『婚活難民』(小学館101新書)、『なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術』(ソフトバンク新書)、『資格を取ると貧乏になります』(新潮新書)、『人事が拾う履歴書、聞く面接』(扶桑社)、『凄母』(東洋経済新報社)がある。東洋経済オンラインにて「ワーキングマザー・サバイバル」連載中。