――楽しい表面的な付き合いしかしていないときにはわからないことがありますよね。
自分も親を亡くしたとか、そういう人が、それまでそんなに親しい付き合いじゃなかったのに、すごくやさしくしてくれるとか、同じマイナスの体験をしていると、わかりあえるところがある。
――『女友だちの賞味期限』に、子どもどもを失うというつらい体験をしたときに、親友が姿を消してしまいった、という話があります。
どう扱っていいかわからなくなったということなんでしょうか。難しいですよね。
――最後に、酒井さんは友だちが多い人ってどう思いますか?
気持ち悪いと思いますね、私は(笑)。特に大人になって友だちが多いっていうのは何か強迫観念があるのかな。人気者になりたい願望、必要とされたい願望をいいかげんに捨てたら、という気が……。私はかなり人見知りなんです。若いころは、人見知りだからこそ、招かれたら行かなきゃいけないかな、と思っていました。でも、32、3歳ぐらいからかな、みんなに好かれてなくてもいいやと思うようになって、もう、いまでは、知っている人としか会わないような感じです。
※このインタビューは『女友だちの賞味期限』初版発行時の2006年に収録した内容の再掲です。
1966年東京都生まれ。立教大学卒業。2004年『負け犬の遠吠え』で講談社エッセイ賞、婦人公論文芸賞を受賞。『そんなに、変わった?』(講談社)、『泡沫日記』(集英社)、『下に見る人』(角川書店)、『紫式部の欲望』(集英社)など著書多数。最新作は、『ユーミンの罪』(講談社現代新書)、『地震と独身』(新潮社)。
聞き手=糸井 恵