「ごめん、俺は疲れたよ」と夫が言ったワケ
夫が説明するのをやめた日
結婚32年目の会社員C(58歳)は、同じく会社員の妻のD(56歳)から届くLINEの通知音が、いつしか怖くなっていた。きっかけは、仕事の都合で帰宅が遅くなる日が増えたことだった。
「最近、帰りが遅いけど、誰と会っているの?」
最初はそんな質問だった。Cは、仕事が立て込んでいることを説明した。
ところが、Dの疑いは収まらなかった。午後8時を過ぎると、LINEが届く。
「まだ会社?」
「誰といるの?」
「本当に仕事なら、写真を送って」
会議中で返信できずにいると、今度は、
「返事がないってことは、やっぱり女といるんでしょ」
というメッセージが届いた。
Cは何度も事情を説明した。だが、どんな説明をしても妻の答えは同じだった。
「どうせ嘘でしょ」
ちなみに、このケースでは、夫の浮気を裏づける事実は確認されていない。それでも妻は、夫の説明を信じられなくなっていた。
ある晩、Cが「もう疑うのはやめてくれないか」と訴えると、妻はこう言い放った。
「何もしていないなら、何を調べられても平気なはずでしょ?」
その瞬間、Cは反論する気力を失ったという。
「ごめん、もう説明するのに疲れたよ」
それが、妻に伝えた最後の言葉だった。
夫を詰め続けた結果の「代償」
妻は「説明を聞いて、安心したい」
妻の言動の背景には、夫を失うことへの不安があったのかもしれない。
「本当に私を愛しているなら、きちんと説明して安心させてほしい」
そんな気持ちで、夫を詰め続けたのだろう。
ところが、夫にとっては、説明しても説明しても「嘘つき」と決めつけられる毎日だった。
何を答えても有罪になる。そんな会話を続けていれば、やがて人は説明すること自体を諦めてしまう。
もちろん、夫が実際に不倫をしていたり、嘘を重ねていたりする場合は話が違う。妻が事実確認を求めるのは当然であり、不信感を抱いた妻だけを責めることはできない。問題なのは、確かな根拠がないまま相手を「有罪」と決めつけ、説明を一切受け入れない状態が続くことだ。
夫の帰宅が遅くなって不安なら、「浮気しているんでしょ」と断定する前に、「最近、一緒に過ごす時間が減って寂しい」「帰りが遅い理由が分からなくて不安」と伝えてみてほしい。
不安を伝えることと、相手を犯人扱いすることは違う。夫婦に必要なのは、相手を追い詰めて白状させることではなく、不安を安心に変えるための対話だからだ。