――若い人向けのエッセイで、結婚はしなくてもいいから恋愛はするように、と呼びかけておられますね。

恋愛というのは筋肉なんです。筋肉を使わないと、恋する能力、人と関係を築く筋力が落ちて寝たきりになってしまいますよ。でも、そういうことをしないで、仕事ばっかりして、機械みたいに生きているのもラクだし楽しいという人も多いみたいですね。

恋愛して、別れたとしても、一度付き合ったことのある男女のほうが友だちになりやすいと思います。別れた後でも気にしあって、10年たっても友だちとしていたわりあって、腹蔵の無い意見も言える……というのはいい関係じゃないですか。条件がありますけどね。お互い過去を引きずってないとか。

――石田さんは親友っていらっしゃいますか? 男でも女でも。

うーん、あまり考えたことないなあ。中学や高校の同級生と今でも会ったりするし、長く続いている友だちはいますが、親友かって聞かれたら、わからない、と言うと思う。何かあったら全部話す、なんていう相手はいませんしね。誰にも言えないことをいっぱい抱えて、そのままお墓に持っていくというのが、豊かな人生だと思いますよ。

――石田さんは、お知り合いは多いでしょうが、お友だちも多いですか?

それも考えたことない。でも、友だちがあまり多い人は怖い。「社交、命」みたいな、人間関係を築くためだけに生きてるような女性ってけっこう多いですよね。それはそれで一つの生き方だけど、できれば、自分の楽な生き方を選んだほうがいい。人間関係って全部、オーダーメイドですからね。

※このインタビューは『女友だちの賞味期限』初版発行時の2006年に収録した内容の再掲です。

石田衣良(いしだ・いら)
1960年、東京生まれ。成蹊大学経済学部卒業。広告制作会社を経てフリーランスのコピーライターに。97年、「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞。受賞作に3篇を加えた『池袋ウエストゲートパーク』(文春文庫)でデビュー。03年、『4TEEN』(新潮文庫)で直木賞を受賞。06年、『眠れぬ真珠』(新潮文庫)で島清恋愛文学賞、13年、『北斗 ある殺人者の回心』(集英社)で中央公論文芸賞を受賞。

聞き手=糸井 恵