疲労が極大でも疲労感が弱まることがある

マラソンのゴール直後のランナーを想像してください。

42.195kmもの区間を走り抜いた体の筋肉は、ボロボロになっているはずなのに(疲労は極大)、達成感に満ちていて「疲れた」とは感じない(疲労感が薄い)ことがあります。

ここまで極端な状況はあまりありませんが、同じような身近な例として、繁忙期に徹夜で仕事をした朝に「まだまだ働けそうだな」と妙に頭が冴えてしまうことなどが挙げられます。

この2人の体の状態は、感覚に関係なく確実に疲弊しているはずです。

睡眠不足や大きな負荷で、集中力や反応速度が落ちたり、免疫・ホルモン系に変化が起きたりすることがあります。にもかかわらず、本来感じるはずの「疲労感」が一時的に弱くなる場合があるのです。

ここに落とし穴があります。疲労感がないからといって、体の消耗が止まっているわけではありません。

免疫細胞は疲弊し、体は限界に近づいている――にもかかわらず全然疲れていないからと動き続けてしまい、疲れを増幅させてしまうような状態が起こりうるのです。

このように、「疲労感」だけを頼りに体のコンディションを判断することには、大きなリスクがあります。

「疲れを感じないから大丈夫」と無理を続けることが、長引く疲労や健康障害につながるおそれがあることをぜひ知っていただきたいと思います。

疲れ果てた女性マネージャー
写真=iStock.com/maroke
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疲労感は体を守る「警報装置」

疲れを「不快なもの」と感じているあなた――。実はそれ、体が必死にあなたを守ろうとしているサインです。

疲れを感じたとき、あなたは「つらくて嫌だ」というネガティブな感覚を抱くでしょう。

しかし、その不快感こそ実は体にとって大切な役割があります。

疲労感とはいわば、体の「警報装置」です。

たとえば、熱いストーブに触れたときの「熱い!」という痛み=不快感が、手を引っ込めさせます。

これは、熱や痛みを感知すると、脊髄などの神経回路が働いて手を引っ込める防御反応です。これと同様に、疲労感という不快感も、休息が必要なことを知らせるシグナルとして働きます。

疲れを感じるから、人は「少し休もう」「今日はここまでにしておこう」と判断できるということですね。