“自力で上がらない”なら、けんばん断裂を疑って
それほど識別が難しいところはあるのですが、五十肩なのか、けんばん断裂なのか、ある程度なら自分で判断できる目安はあります(あくまでも目安であって、すべてが当てはまるわけではありません)。
まず、肩の痛みがある人で、40代~50代なら五十肩、60代以降なら、けんばん断裂の可能性が高いでしょう。
特に、「痛いほうの腕を、反対側の手で(または他の人の手で)上まで持ち上げようとしても、硬くて動かない」のであれば、五十肩の可能性が高いでしょう(*4)。五十肩になると、いろいろな方向の動きが悪くなります。特に図にあるような「外旋」と呼ばれる動きが硬くなります(*5)。
逆に、「反対側の手(または他の人の手を)を使えば痛いほうの腕を上まで持ち上げられるのに、自力では上がらない。動かそうとしても、力が抜ける」のであれば、けんばん断裂の可能性が高いでしょう。これは、肩が動くときに、筋肉が使われていない状態です。
なお、肩の少し内側の出っ張り周辺を押すと痛かったり、左右の痛みに差があったり、時々激しく痛むようなことがあれば、五十肩の可能性が高いでしょう。ドアのノブを回すように腕をひねったときに痛むのであれば、けんばん断裂の可能性が疑われます。
放置すると最悪の場合、人工関節に
ただし、これのセルフチェックが絶対というわけではありません。例外もあるからです。最終的には整形外科での徒手検査(理学検査)と、レントゲン検査、エコー検査やMRI検査などで、総合的に診断してもらうことが必要です(*6)。
きちんとした診断を受けずに、けんばん断裂であるにもかかわらず、五十肩だと勘違いしている方が少なくありません。「痛くてつらいけど、五十肩は1年ぐらいしたら自然に治るって聞いたから」とほうっておく方が多いのです。
ですが、それがけんばん断裂であれば、自然に治ることはほぼあり得ません。ほうっておけば悪化する一方であるケースがほとんどなのが、けんばん断裂なのです。五十肩とは違うのです。
けんばん断裂は、ほうっておくと断裂が広がってしまうのです。その断裂が最悪のレベルにまで達したら、もう手術でも修復できず、人工関節に入れ替えるしかなくなることもあります。
人工関節なんて大きな手術は、できればしたくないですよね? そのお気持ちはわかります。ですから、そうならないように、自分自身の肩の腱板で天寿をまっとうできるように、今のうちに手を打っていただきたいのです。
どんな方であれ、多かれ少なかれ肩に負荷をかけて生きてきたはずです。その負荷は、毎日少しずつ蓄積しています。だからこそ、どんな方でもけんばん断裂になる可能性があるのです。
(参考文献)
*1 Ottenheijm RPG, van’t Klooster IGM, Starmans LMM, et al. 2014. Ultrasound-diagnosed disorders in shoulder patients in daily general practice: a retrospective observational study. BMC Fam Pract 15: 115.
*2 Tempelhof S, Rupp S, Seil R. 1999. Age-related prevalence of rotator cuff tears in asymptomatic shoulders. J Shoulder Elbow Surg 8: 296-299.
*3 Hermans J. et al. Does this patient with shoulder pain have rotator cuff disease? JAMA. 2013; 310(8): 837-847.
*4 Hegedus EJ, Goode AP, Campbell S, et al. Physical examination tests of the shoulder: a systematic review with meta-analysis. Br J Sports Med. 2008; 42(2): 80-92.
*5 Kelley M.J. et al. Shoulder pain and mobility deficits: adhesive capsulitis. J Orthop Sports Phys Ther. 43, A1-31 2013.
*6 Jain N.B. et al. The Diagnostic Accuracy of Special Tests for Rotator Cuff Tear 2017.
1981年生まれ。山形大学医学部卒業。肩関節、肩関節鏡手術、スポーツ医学の専門家としてさまざまな肩治療を行う。肩関節鏡手術は年間約400件と全国トップクラス。診療のかたわら「医学的根拠のあるセルフケアを」との信念から、YouTubeで医療情報の発信も行っている。現在は東京脊椎・関節クリニック 羽田に所属。
