「10万円バッグ」で怒られた苦い思い出

「うちのブランドを象徴する10万円の最高級のビジネスバッグを販売しようと目論んだこともあったんです。1個売れば、下請け50個分の売上になり、利益率が上がるなんて考えて、意気揚々として、完成したバッグをある経営者とビジネスコンサルタントに見せたんです。買ってもらえると甘く考えていたんですよね」

彼らの反応は、「川西さんは、お客様のことを1ミリも考えていない。考えていることは、『10万円で売れたらいいな』ということだけだ。商品というのは、お客様の問題を解決するためにあるんです。このカバンは君の自己満足にしか過ぎない」「川西さんが最高のカバンと思っていないものを、何で僕が買わないといけないの」と手厳しかった。そのおかげで、目が覚めた。

この経験から、自分たちの商品を磨き続けることの重要性を確信し、現在では経営理念を「愛されるものづくり」と定めている。

自社工場に加え、日本・ベトナムの協力工場で月平均1000個のカバンを手作業で作っている
撮影=プレジデントオンライン編集部
自社工場に加え、日本・ベトナムの協力工場で月平均1000個のカバンを手作業で作っている

「人生を上機嫌にするカバン」を作る

そして、セールをしない、自社ECを軸に顧客に直接商品を届ける、をポリシーに据えた。「ものづくりのエンターテイナー」として、定番商品に甘んじることなく、毎週土曜日に新商品を発表するタスクを課している。念頭にあるのは、ファンや顧客との関係づくり。ファンとの交流イベントを実施したり、視聴者とライブで対話したりするのも、そのためだ。

そうして築き上げたカワニシカバンを応援する人々とのつながりが、同社の強みになっている。

2026年4月、東京・神楽坂にも出店した。広さ6坪、週4日の営業だが、全国からカワニシカバンを求め、新旧ファンが足を運ぶ。

神楽坂のメインストリートに6坪の店舗を構えた
撮影=プレジデントオンライン編集部
神楽坂のメインストリートに6坪の店舗を構えた

日本一のカバン屋、100億円、そして世界進出。川西さんはそれらを通過点とし、その先に『世界一愛されるブランド』を見据えている。

「僕は、世界一売れるブランドよりも、世界一愛されるブランドを作るほうがわくわくするんです。お客様も社員も職人も取引先も、関わるみんなと一緒にブランドを育てていきたい。100億円も、日本一も、世界進出も、その途中にある目標です。いつか世界中の人に、カワニシカバンを届けたいですね」

(取材・文=ライター・中沢弘子)

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