養子縁組に有利な条件
それでは養子縁組にふさわしい条件とは何でしょう?
以前野田聖子さんが講演で「養子縁組」という可能性を考えたが「年齢とわたしが仕事を持っていることで無理だった」という発言をされていました。
これは民法の規定に載っているわけではありません。極端にいえば、独身者が養子をとってはいけないという法律もありません。しかし、養子がほしい、特に小さな子どもがほしいという人たちが待機をし、競争率の高い現状では「高年齢、共働き」は不利になります。独身ももちろん同じです。
養子あっせん団体のHPなどを見ますと、だいたい「子どもとの年齢差は40歳」となっています。つまり「不妊治療をあきらめてから……」と思って40代、50代になると、どんどんチャンスが減ってしまうのです。決意をするなら早いほうがいいということでしょう。
共働きも「子どもの福祉という観点から「ずっと保育園に預けっぱなしというのは困る」ということになります。婚姻届をしている夫婦であること、子どもとの年齢差が40歳未満であること、一定期間夫婦のどちらかが育児に専念できること……だいたい、このような条件が有利になります。
しかし欧米では共働きの夫婦も普通に養子をとっています。日本の状況は時代遅れではと思うのですが、あくまで選ぶのは先方なので異を唱えても始まりません。大葉さんによれば「児童福祉の制度なので、ハードワーカーの共働き夫婦は、児童福祉の文脈だと戦力外となります。でも、育児休暇をとったり、祖母が同居であったり、子どもが幼稚園や保育園で遊ぶのが好ましい年齢の子どもの特別養子縁組なら、仕事を持つ親でも、子連れで働く日があるスタイルでも可能だと思います。0歳児でもパパがフリーランスで縁組が成立した方々もいるかもしれません」ということです。これもご縁なので、40歳を1歳過ぎても0歳時の養子はダメとか、それほど厳密なものではありません。
また里親として預かった子どもが、15歳以上になってから子どもの意志で養子縁組(普通養子縁組)をするという場合もあります。
しかし実際に児童相談所のあっせんによる2歳未満の養子縁組はほとんどすすんでいない状況です。まず親が親権を放棄しないこと、また養子縁組のマッチングは時間と人員が必要で、虐待問題で手いっぱいの相談所が、なかなかその業務に時間を割けないこと。また障害などの有無が判明する2歳時未満のあっせんには「積極的でない」ことなどが理由となります。(障害がわかって子どもを返したいという親御さんもいるからです)
なぜ、ドラマの芦田愛菜ちゃんのような乳児からいる子どもが(愛菜ちゃんの役は赤ちゃんポストに託された子どもという設定です)、養子にならず、施設にいるのか、ドラマの背景がおわかりいただけたかと思います。
少子化ジャーナリスト、作家、昭和女子大女性文化研究所特別研究員、大学講師
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。講演、テレビ出演多数。経産省「女性が輝く社会のあり方研究会」委員。著書に『女子と就活』(中公新書ラクレ)、共著に『妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』(講談社+α新書)など。最新刊『格付けしあう女たち 「女子カースト」の実態』(ポプラ新書)。