「中国嫌い」に外注される嫌中動画

2025年12月、Xで大手仕事仲介サイトのクラウドワークスに掲載された以下のような「動画制作」の下請け募集依頼が炎上した。

○依頼内容:YouTubeに投稿する日本称賛系、嫌中系の台本作成
○動画:中国人の迷惑行為、モラルの欠如、その後自業自得の結末となったり天罰が下ったりするフィクション動画
○応募必要条件:日本が大好きな方、中国が嫌いな方

そもそも嫌中とは、中国や中国人への嫌悪感や差別感情、一方的な非難を表す言葉で、韓国に対する「嫌韓」とともに2010年代には、「嫌中・嫌韓本」が多く世に出た。両国の文化が日本に劣後するとか、両国の経済の崩壊が近いと「予言」する類いの内容だが、ベストセラーも生まれ書店に並んだ。

一方、「日本称賛系」は、外国人が日本を褒める、他国よりも日本が優れているといった内容のコンテンツの総称で、こちらも2010年代に流行った「日本の技術や文化はすごい」などとうたうテレビ番組の派生形といえる。

クラウドワークスは、仕事を発注したい企業や個人とフリーランスのワーカーをつなぐサービスで、この発注者は動画編集や台本の執筆といった業務を、個人に安価で外注し、「嫌中本」ならぬ「嫌中動画」、そして「日本称賛動画」を大量生産しようということのようだった。

アカウント凍結前に登録者約1万人超

サイト上の記録を調べると、発注者のアカウントは、少なくとも2024年11月ごろから2025年12月まで、「中国批判」「嫌中」などとうたう動画制作の依頼を、少なくとも14件募集していた。

台本作成の他に、AI音声や画像をあてはめる編集作業も募集し、少なくとも30人以上と業務委託が成立していた。報酬は、台本作成が1本1500~5000円で、編集作業が2000~7000円だ。

:「中国や中国人の迷惑行為、モラルの欠如、その後、自業自得の結末となったり天罰が下ったりするフィクション動画」、YouTube動画の台本作成を説明していたクラウドワークス上の投稿(現在は非公開/出典=『ルポ アルゴリズム政治』朝日新書)
©朝日新聞社
「中国や中国人の迷惑行為、モラルの欠如、その後、自業自得の結末となったり天罰が下ったりするフィクション動画」、YouTube動画の台本作成を説明していたクラウドワークス上の投稿(現在は非公開/出典=『ルポ アルゴリズム政治』朝日新書)

募集内容のあまりの露骨さから、発注者とクラウドワークスはX上で批判を集めた。同社は募集内容を確認し、ガイドラインで禁止する「差別につながる依頼」に該当する可能性が高いと判断。募集を非公開化し、アカウントを凍結することで収拾をはかった。

しかし、この発注者は既に多くの動画を世に送り出していた。取材を進めると、この発注者のものとみられる二つのチャンネルが特定できた。いずれも、登録者は約1万人超。2024年に開設されており、動画は20~30分のものが多かった。計400本以上が投稿され、再生回数が45万回を超えるものもあった。