悩んでいる人に「なぜ辞めるのか」と聞くリスク

部下が「辞めたい」と口にしたとき、上司は理由を詳しく聞きたくなります。しかしその問い方が、かえって離職意向を強めてしまう場合があります。

匠英一監修『すぐに使えるビジネス教養 心理学』(フォレスト出版)
匠英一監修『すぐに使えるビジネス教養 心理学』(フォレスト出版)

ここでは、具体的な事例をもとに、質問の方向が注意の向け方を変え、意思決定に影響するメカニズムを整理し、建設的な対話のあり方を考えます。

KEYWORD=選択的注意、リフレーミング

中堅企業で働く入社3年目の藤浪は、「辞めたい」という思いを抱えていましたが、その理由ははっきりしていませんでした。

そんな中、上司の山岡課長から「なぜ辞めたいのか」と問われたため、業務量や評価、人間関係など思いつく不満を並べ始めます。すると、話しているうちに辞めたい理由ばかりが強調され、気持ちは次第に離職へと傾いていきました。面談後、藤浪は退職を決意しかけます。

しかし後日、先輩の山下から「続けたい理由は何か」と問われると、成長意欲や職場への愛着といった別の側面が浮かび上がりました。

この問いの違いによって、藤浪は自分が否定的な側面に偏っていたことに気づき、判断を見直すきっかけを得ます。