食事だけではない健康寿命の要素

彼らは、「毎日同じだから」健康だったのでしょうか?

違います。彼らは、「毎日同じでも」健康だったのです。

長寿地域の人々が長生きしている理由は、食事だけではありません。適度な運動、家族や地域とのつながり、ストレスの少ない生活、生きがい――これらすべてが複雑に絡み合っています。

動物が健康なのも、毎日同じ餌を食べているからではなく、その餌が体に合っているからです。祖父母が元気だったのも、干物を食べていたからではなく、毎日畑に出て体を動かし、家族と笑い、好きなものを安心して食べていたからです。

つまり、「毎日同じ」は、健康の必要条件ではありません。でも、「毎日同じでも大丈夫」という事実は、私たちに大きな自由を与えてくれます。

「毎食同じでも大丈夫」で得られる安心感
プレジデントオンライン編集部にてAdobe Fireflyで作成
「毎食同じでも大丈夫」で得られる安心感

毎日の食事で何よりも大切なこと

世の中には、「食の多様性」という言葉があります。「毎日いろいろなものを食べましょう」――栄養指導でよく聞く言葉です。

これは、間違ってはいません。さまざまな食材を食べることで、不足しがちな栄養素を補える可能性は高まります。

でも、だからといって、「毎日同じではいけない」というわけではないのです。

必要な栄養素が確保できていれば、毎日同じでも健康に過ごせます。毎日大好きな牛丼でもラーメンでも、工夫次第で栄養バランスは保てます。大切なのは、「多様であること」ではなく、「必要な栄養が揃っていること」です。

守田和弘『食べたいものを、食べていい 「毎日牛丼」生活も肯定する科学』(光文社)
守田和弘『食べたいものを、食べていい 「毎日牛丼」生活も肯定する科学』(光文社)

そして、もう一つ。本書で何度もお伝えしているメッセージ。「安心して、おいしく食べること」です。  

毎日違うものを食べようとして、献立に悩み、買い物で迷い、調理に疲れる。それがストレスになってしまっては、本末転倒です。

食事は、楽しく、安心して、おいしく食べるためのものです。義務でもありません。だから、もしあなたが毎日同じようなものを食べていて、それが心地よいなら――。それでいいのです。

罪悪感をもつ必要は、まったくありません。

【参考文献】
*1 Vohs,K.D.,Baumeister,R.F.,Schmeichel,B.J.,Twenge,J.M.,Nelson,N. M.,& Tice,D.M.(2008). Making choices impairs subsequent self-control: A limited-resource account of decision making,self-regulation,and active initiative. Journal of Personality and Social Psychology,94(5), 883-898.

守田 和弘(もりた・かずひろ)
実践女子大学教授

実践女子大学教授・博士(農学)。富山県生まれ。静岡大学農学部卒業、筑波大学大学院生命環境科学研究科博士課程修了。富山県農林水産総合技術センター食品研究所、東京医療保健大学を経て現職。2017年日本食品科学工学会奨励賞受賞。専門は食品科学。食の科学を探求しながら、食べる喜びと健康の両立について思考を巡らす。好物は牛丼。