動かない状態で、筋肉は1カ月で半分失われる

「もう年なんだから、そんなに動かなくていいよ」
「重いものは、代わりに持ってあげるね」
「(電車などの乗り物で)席が空いてるから、座りなよ」

年を取ってくると、家族や周りの人から「やってあげるね」「座ってていいよ」などと言われ、「誰かにやってもらう」ことが増えてきます。

リビングでくつろぐ年配の女性
写真=iStock.com/Hanafujikan
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相手は親切心で「やってくれている」わけですが、そのやさしさが逆に「老いを早めてしまう可能性がある」ことを知っておく必要があります。私たちは「動かない」でいると、どんどん「動けなく」なっていくからです。もちろん重い病気の急性期などで強い痛みがあったり、大ケガをした直後などは、安静にする必要があります。

しかし、「できるだけ動かない」「ずっと座っている、あるいは寝ている」という状態が続くのは、体にとって大きなマイナスです。

体を動かさない状態が続くと、筋肉は驚くほど早く衰えていきます。筋力は1日で約2%、1週間で10~15%、1カ月経つとなんと約半分も失われてしまうのです。

動かないでいると、体に負担がかからずラクに感じます。けれどもそれは、一時的に効く“麻薬”のようなもの。ラクをしているつもりが、知らないうちにどんどん体を弱らせてしまいます。

90歳から“役割”を取り上げてはいけない理由

私はかつて、ある地方の病院で定期的に診療をしていました。そこには80代、90代のご高齢の患者さんも多く通院されていました。

その中に、90歳を過ぎても家族経営の精米店を手伝っている女性の患者さんがいました。毎日5kgの米袋を運ぶ作業をしているほど体力もあり、体調も非常に良好。診察のたびに「本当にお元気ですね」と声をかけていたほどです。

ところがある日、家族からこう言われました。

「もう90歳を越えたんだから、そんな仕事はやらなくていいよ」

その言葉をきっかけに、女性はほとんど体を動かさなくなりました。すると――わずか2週間で体調が急激に悪化。日常生活で体を動かすことすら、難しくなってしまったのです。女性にとって、米袋を運ぶ作業は「老いに負けない筋トレ」そのものでした。それをやめた途端、体は一気に衰えてしまったのです。

この話は、決して特別な例ではありません。「年を取ったら、動く量は減らす」「若い人に任せる」と考えがちです。しかし実際には、その逆です。年を重ねたからこそ、意識して体を動かすことが必要なのです。