体を動かすと“心の老化”も防げる

特に転倒は、「自分が年を取ったこと」に気づかされる大きなきっかけです。

書影
安保雅博『歩幅を見れば、寿命がわかる 「死ぬまで歩ける体」のつくり方』(アスコム)

何もないところ、小さな段差、自宅の階段や風呂場などで転倒し、場合によっては通院や入院を要するケガをしてしまうと、転んだことによるショックで“心の傷”が残ってしまうことも、決して珍しくありません。

「また転ぶんじゃないか」
「外に出るのが怖い」

このような心境により、家に閉じこもりがちになる→体を動かさなくなる→さらに体が弱るという悪循環を生んでしまうのです。

逆に、「老いに気づけた→今から対策しよう」という気持ちの切り替えができれば、転倒のリスクは下がり、「自分はまだまだ動ける」という感覚が自信につながります。

体を動かして軽く汗をかくと、気分がスッと明るくなる経験をしたことがある方も多いはずです。運動療法が、うつ病をはじめとする精神疾患に有効であることは、数多くの研究で示されています。体を動かすことは、体の老化を防ぐだけでなく心の老化も防いでくれるのです。

「どう生き、どう動き続けるか」を考えて

私が専門としているリハビリテーション医学は、もともと病気やケガによる障害を克服することを目的とした学問でした。つまり、「悪くなったところを補い、社会生活に戻る」ための医学だったのです。

ところが2017年、リハビリテーションの概念に大きな変化が加えられました。それが、「人の活動を育む」という考え方です。

超高齢社会では、1人の人が複数の病気を同時に抱えることも珍しくありません。その場合、一つひとつの障害だけを見ていては、人間らしい生活を支えることができないのです。だからこそ今、リハビリテーション医学は「どう生き、どう動き続けるか」を支える医学へと進化しています。

この考え方は、病院の中だけの話ではありません。皆さんの日常生活そのものに、ぜひ取り入れていただきたい視点です。

老いに負けず、自分らしい暮らしや人生をできるだけ長く続けていくためにも、日頃から体を動かすことを心がけてください。

(参考文献)
・安保雅博、中山恭秀『寝たきり老後がイヤなら 毎日とにかく歩きなさい!』(すばる舎)
・安保雅博、中山恭秀『何歳からでも 丸まった背中が2ヵ月で伸びる!』(すばる舎)
・安保雅博、中山恭秀『家でも外でも転ばない体を2ヵ月でつくる!』(すばる舎)
・厚生労働省「国民生活基礎調査 2022年」

安保 雅博(あぼ・まさひろ)
リハビリテーション科医/博士(医学)

1990年東京慈恵会医科大学卒業。1998年?2000年までスウェーデンのカロリンスカ研究所に留学。2007年よりリハビリテーション医学講座主任教授。2016年、同病院副院長に就任。現在、東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科診療部長、リハビリテーション医学講座主任教授。延べ15万人以上の患者を診療してきたリハビリテーション治療のパイオニア。著書に中山恭秀氏との共著『何歳からでも 丸まった背中が2ヵ月で伸びる!』『家でも外でも転ばない体を2ヵ月でつくる!』『首・肩・背骨の「可動域」を5度広げるだけで体がラクに健康になる!』(すばる舎)など多数。