政府案に隠された狙い
じつは民間人の養子の子に、皇位継承資格を認めることが政府案の隠された狙いだ。
敬宮殿下など女性皇族が皇位の継承と皇統の受け継ぎのラインから外される。それとは逆に、今や皇室とほとんど関係の薄い民間人の子へと、皇位と皇統の継承者がすっかり置き換わりかねない制度設計になっている。
森英介衆院議長が「養子の子のうち男子は皇位継承資格を持つ」旨の発言をして、批判を受けた。本人はそれを失言として謝罪したが、全体会議であえて話題から外していたとしても、現在の皇室典範を前提とすれば、養子の子は(「王」と「王妃」の間の子とされるはずだから)当たり前に皇位継承資格をもつ。
皇族として皇室に生まれ育ち、皇室の気風、精神を受け継ぎ、すでにご公務に精励されていても、内親王・女王殿下方はただ“女性”だからというだけの理由で、配偶者もお子さまも「国民」とされる。近代以降、ほかに類例を見ない、夫婦も親子も身分が異なる“異例の家族”を強制される。
一方、親の代から一般国民の旧宮家系民間男性が養子縁組で皇族になった場合は、どうか。彼は“男性”なので今の皇室典範を改正しない限り、妻やその後生まれた子は皆、「皇族」になるし、男子なら皇室の伝統的な精神と無縁でも、皇位継承資格をもつ。驚くべき「男尊女卑」に貫かれた制度案と言うしかない。
政府はおことばを黙殺
天皇陛下は制度変更の当事者でいらっしゃる。なので当然、政府の思惑を見抜いておられるはずだ。だから、こんな男尊女卑的な制度が国民に受け入れられるとは、とてもお考えになれなかっただろう。異例のおことばによって、「国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」と、強く牽制されたゆえんだ。
これについて、木原稔内閣官房長官は「コメントは差し控える」と述べた(6月12日の記者会見)。憲法が天皇の国政不関与を定めていることに配慮したのかもしれない。
だが、お門違いだ。当事者でいらっしゃる皇室の長たる天皇陛下のお気持ちに配慮しない皇室典範の改正など、健全に機能するとは考えられない。国民からも支持されるはずがない。
その点、小池百合子東京都知事は「天皇陛下がおことばを述べておられるように、まさに国民の理解が得られるものに、というそのおことばについては、しっかりと受け止めるべきだというふうに思っております」と述べた。礼をわきまえた常識的な態度だった。