男系よりも「国民と苦楽を共にすること」を重視

小泉内閣当時の天皇誕生日の記者会見(平成17年[2005年])で、女性天皇、女系天皇を認める政府案について、記者が「皇室の伝統の転換になります」として、否定的な観点から質問をした。それに対して、上皇陛下が(男系女系にかかわりなく)「天皇及び皇族は、国民と苦楽を共にすることに努め、国民の幸せを願いつつ務めを果たしていく」という在り方こそが「皇室の伝統」である、と肯定的に回答されていた事実がある。それと先の記事は合致する。

「国民と苦楽を共にする」というおことばは、もともとこのような、硬直した男系限定的な思考パターンを相対化する文脈で、語られたものだった。

愛子さまのご覚悟

ここで思い出されるのは、敬宮(愛子内親王)殿下がご成年を迎えられた時の記者会見だ。そこで敬宮殿下は、皇室の在り方について次のように述べておられた。

「上皇陛下が折に触れておっしゃっていて、天皇陛下にも受け継がれている、皇室は、国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にしながら務めを果たす、ということが基本であり、最も大切にすべき精神であると、私は認識しております」

上皇陛下がおっしゃっていた真の「皇室の伝統」、そして天皇陛下が受け継いでおられる「国民と苦楽を共にする」精神を、敬宮殿下ご自身がしっかりと継承されるご覚悟を、明確に示しておられた。しかも男系限定を相対化する“キーワード”を、敬宮殿下ご自身が口にされていた事実は注目に値する。

こうした流れを踏まえて、改めてこのたびの記者会見での天皇陛下のおことばに立ち戻る。すると、「皇室の在り方や活動の基本は国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にすることだと考えており……」という陛下のおことばが、先の敬宮殿下のおことばとほぼ重なることに気づく。

政府も認めた「養子案は前例がない」

「国民と苦楽を共にする」精神の継承こそが「皇室の伝統」であれば、すでに80年近くも俗世間で暮らし、親の代から国民である旧宮家系民間人の養子によって受け継がれることは、期待しにくい。

それらの民間人が男系の血縁において、今の皇室とほとんど他人である事実は、次第に知られるようになっている。しかし率直に言って、精神の隔たりはもっと埋めにくいのではないか。

旧宮家系民間人のような生まれながらの非皇族が、養子縁組によって皇族になった前例が“ない”ことを、政府は先ごろ国会の質疑の中で公式に認めた(6月12日の衆院内閣委員会での緒方禎己宮内庁次長および木原稔内閣官房長官の答弁)。私もこれまでその事実を繰り返し強調してきた。