「家を売って施設に入れて」は簡単じゃない
自分が施設に入ることを想定しているなら、まずは資産状況を確認したいところだ。高齢者施設もさまざまな種類があり、月額利用料にもかなり幅がある。いざとなったら自宅を売って、と考えがちだが……。
「子どもがいる人は、よく『迷惑をかけたくない』とおっしゃるけれど、子どもがちょっとぐらい何かしてくれるのは当たり前と思っているふしもあります」
「しばしば聞くのが『自分に何かあったら家を売って施設に入れて、と子どもには言ってある』という言葉です。しかし、心身が弱り判断力が低下した場合、子とはいえ、親名義の家を売るのは容易なことではありません。準備なしには売却などできないのです。売却できなければ、介護費用は、誰が、どう工面することになるのでしょう」
確かに、家を売るには手間と時間がかかる。査定の依頼、業者や売却方法の選択、内見の立ち合いや値段交渉、事務手続きなどなど。そもそも、不動産を売却する権限は、その所有者にしかない。親が認知症になり、判断力が低下してしまった場合、子どもであっても代理での売却は原則できないのだ。本気で、売却を考えるなら、元気なうちに、任意後見制度や家族信託などの利用を検討する必要があるだろう。
親族の承認を得るだけで100万円
ここから、自分介護の観点がないまま「自分らしい老後」が難しくなってしまったケースを見てみよう。
ケース1 名義人が24人、承諾を得るために1年以上、100万円かかった
Kさん(60歳)は代々続いた家業を自分の代でたたんだ。80代の親の介護資金のためにも、店舗のあった土地を売却しようと考えた。ところが、名義人は顔も知らない遠い親戚を含めて24人もいたことが判明。売却するにはすべての名義人の承諾が必要で、素人には不可能。結局司法書士に依頼し、1年がかりで調査料含めて約100万円の出費に。「父がもっと前にきちんと処理してくれれば……」と恨み節のKさんだが、子どもに負担をかけずに済んだのでほっとしているという。
そう簡単に売れない“ワケアリ”物件があることも知っておいてほしい。家に関する諸問題はきっちり片付けておくことを勧める。子どもに負の遺産や“負”動産を残して一生恨まれないように!