ある動物の糞を利用した「圧縮天然ガス車」

スズキは牛のふんからメタン(CH4)ガスを抽出して、圧縮天然ガス(CNG)車の燃料に利用する事業を始めている。ちなみにCNGの主成分はメタンだ。

グジャラート州に昨年末、今年1月と2工場を開設。契約する近隣農家から定期的に集めた牛糞を発酵させ、メタンが成分のバイオガス(CBG)として工場併設のスタンドで販売している。

バイオガス・プラント除幕式
写真提供=スズキ

農家からの買い取り価格は、牛糞1kg当たり1ルピー(日本円で約1.7円)。一頭の牛から年間7万2000kgの牛糞がとれるため、牛が二頭いれば15万ルピー弱の年間収入を農家は得られる(たいていの農家は農耕用に牛を数頭飼っている)。

一方、CBGの販売価格は1kg当たり75ルピー。CNGの同81ルピーよりも安い。

インドには8億頭の牛がいる。インドの牛は草を食べる。穀物肥料を食べるアメリカの牛とは違う。

草は光合成により、大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収するため、車両が走行中に排出するCO2とは相殺される。なので牛糞はカーボンニュートラル燃料と位置づけられている。化石燃料のCNGとは一線を画す。

また、草食なので糞はそれほど臭くはない。

CNG車のシェアは7割

インド政府は、CNG車の普及を後押ししている。インドでは高騰中の原油の9割を輸入に頼っている一方、CNGは国内でも産出されるから。

CNG車はインド自動車市場の約2割を占める。マルチ・スズキはCNG車市場で約7割のシェアをもつ。

現在、マルチ・スズキには商用車を含めて19車種のラインナップがあるが、このうち15車種にCNG仕様がある。24年度には62万台を販売し、販売構成比は35%。20年度が約16万台で構成比12%と比較すると、大きく伸びている。トップメーカーであるマルチ・スズキの伸びが、CNG車の販売増に連動している。