「加齢性鼻炎」なんて存在しない
巷では「加齢性鼻炎」という言葉がはやっているようです。ですが、「加齢性鼻炎」という正式な病名はないし、その言葉を使う耳鼻科医もあまりいません。それは、加齢が原因で起こる鼻炎などないからです。
なにげない会話で、お年を召した方が「薬は効かないし、水のような鼻水が止まらない」と言ったとき、「それ、加齢性鼻炎かもしれない」とおっしゃる方がいるかもしれませんが、「そうなのか」と納得なさらないでください。
そういう症状のほとんどは、「アレルギー性鼻炎」か「副鼻腔炎」、または「過敏性鼻炎(血管運動性鼻炎)」です。
同じように、「年をとるとドライノーズになりやすい」と思い込んでいる方もいらっしゃいますが、実は「ドライノーズ」は病名ではなく、単なる症状です。
眼が乾く「ドライアイ」や、口が乾く「ドライマウス」(正式には「口腔乾燥症」)という病気は存在し、それぞれに対応する薬もあります。ですが、ドライノーズという病気はなく、何かの病気でその症状が出ているのです。その多くは「アレルギー性鼻炎」です。
もちろん、鼻の中が乾燥して粘膜がヒリヒリ痛んだり鼻血が出たりすることはあります。ですが、鼻の粘膜だけが乾燥することはありえません。齢を重ねると体中のすべての粘液が少なくなり、すべての粘膜が乾燥するのです。
鼻づまりは「ほっとタオル」で解決する
鼻の乾燥を訴える方には、私は「鼻ほっとタオル」をやっていただきます。
(1)水でしっかり濡らしたタオルを軽く絞り、電子レンジで「少し熱いかな」と感じるぐらいまで温めます。43度ぐらいが理想です。
(2)そのタオルに顔をつけて、鼻から思い切り息を吸います。吐くときにはタオルを外し、またタオルを当てて息を吸います。
(3)上から副鼻腔のツボを押せば、より不快感が落ち着きます。
鼻づまりが取れるリセット法で、私は鼻の「温熱療法」とも呼んでいます。
美容院や理髪店などで当ててくれるホットタオルの感覚をめどに、「鼻が通った」と思うまでやるといいでしょう。
(参考文献)
・環境省,「花粉症保健指導マニュアル」
・斉藤洋三・井手武「花粉症の科学」(化学同人出版)
・斉藤洋三・井手武・村山貢司「新編 花粉症の科学」(化学同人出版)
・今井透「名医のわかりやすい花粉症・アレルギー性鼻炎」(同文書院出版)
・東京科学大学 ※大学院医歯学総合研究科 認知神経生物学分野 上阪直史教授と咬合機能矯正学分野 小野卓史教授の研究グループ Communications biology 2024 Oct 23;7(1):1381.「Nasal obstruction during development leads to defective synapse elimination, hypersynchrony, and impaired cerebellar function」Moe Tanigawa, Mengke Liu, Mariko Sekiguchi, Kyosuke Goda, Chiho Kato, Takashi Ono and Naofumi Uesaka DOI:10.1038/s42003-024-07095-4
医学博士、耳鼻咽喉科、頭頚部外科。専門は音声学・癌・難聴遺伝子。信州大学病院に勤務後、難聴遺伝子、遺伝子解析研究のスペシャリストとして厚生省で研究に携わり、米国ネブラスカ州国立リサーチ病院に留学、研究を続ける。大学病院での高度医療、癌センターでのオペ研修など医療のトップレベルで15年以上勤務。横浜市大医学部にて医学博士を取得。現在、横浜市内のクリニックで地域密着の診療に従事。著書に『1万人の耳の悩みを解決した医師が教える 耳鳴りと難聴のリセット法』(アスコム)がある。
