受験シーズンは花粉症大量飛散の時期と重なる。日本気象協会によれば、2025年春の花粉飛散量は、九州から北海道にかけて例年より多く、例年の2倍以上のエリアもある。内科医の谷本哲也さんは「鼻づまり、目のかゆみ、薬の副作用による眠気は勉強の障害になり、花粉症の対策のよしあしが合否に影響する。正しい対策をすることが大切だ」という――。
鼻をかむ女性の手元
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多くの受験生が花粉症の不快な症状と戦いながら机に向かっています。鼻づまりや目のかゆみ、さらには薬の副作用による眠気などは学習効率を下げてしまいます。花粉症対策には多くの方法がありますが、正しい方法で早めに対処することが大切です。

内科医としての臨床の状況を踏まえ、最新の花粉症対策のポイントを解説します。

花粉症が学習に与える影響

花粉症の主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみです。

ノルウェーでの疫学研究では、花粉の量が平均的なレベルを上回ると、高校生の試験点数が数%低下したと報告されています。アメリカの小学生でも同様の研究があり、イギリスの高校生でもアレルギー性鼻炎や薬の使用で成績が低下したと発表されています。

東京都内の中高生を対象とした調査でも、スギ花粉症の有病率が約30%に達し、症状が中等度以上の生徒が9割以上を占めていました。花粉症が受験生の生活に大きな影響を及ぼし、その対処をできるかできないかが成績や合否の鍵を握ると言っても過言ではありません。

注意が必要なのは、症状を和らげるために使用される抗アレルギー薬の中には、眠気や集中力の低下を引き起こすものもあるということです。せっかく服薬しても、結果として学習効率、学業成績や出席状況に悪影響を与えるケースもあるわけです。

花粉症の症状や程度は個人差が大きく、薬の選択肢もいろいろあるので、個々人の状況を踏まえ一人ひとりに合った個別化した方法を主治医とよく相談することが欠かせません。

さまざまある抗ヒスタミン薬の選び方

花粉症に用いられるアレルギーの薬でもっともポピュラーなのは、抗ヒスタミン薬です。多くの種類があり、自分に合ったものを服用することが重要です。

●第一世代抗ヒスタミン薬

以前からある第一世代抗ヒスタミン薬は即効性があり、症状の緩和に効果的ですが、脳の中枢神経系に作用しやすいため、眠気や集中力の低下を引き起こす短所があります。

●第二世代抗ヒスタミン薬

現在の主流である第二世代抗ヒスタミン薬は製薬各社から10種類以上販売されています。第一世代より脳への薬の移行が少なく、眠気が出にくいこと。ただし、第二世代の中でも脳への移行の度合いはさまざまで、効果や副作用の面でも弱めから強めまでさまざま。一部は薬局で選べる市販薬となっています。

また、薬の種類によって、朝晩2回、夜1回、普通は1日1錠だけど、花粉が多く症状が強いときは量を増やして1日2錠まで飲めるものなど服用方法が異なります。副作用が少ないとはいえ、眠気が多少出ることもあり、受験生では寝る前に飲む1回タイプを選ぶことが多いです。それでも翌日眠気が残ることもあり、注意が必要です。

飲み薬には、錠剤だけでなく、口腔内崩壊錠(OD錠)、散剤(粉薬)やシロップもあります。口腔内崩壊錠とは、水なしまたはわずかな飲水のみで服用しやすく、速やかに唾液で溶けるようにした錠剤のことです。

このように選択肢が多く、使ってみないと効果や副作用が分からない面もあります。どの薬が合っているのか分からない場合は、最初は数週間分程度の少なめで薬を処方してもらい、自分に合っていたら続ける、合わなかったら別の薬に変えてもらう手順がよいでしょう。