「僕が知らない娘の姿まであった」と驚く父

やまなみこども園の特徴は、そんな親にすら保育に参加することのやりがいを実感させる環境があるところだ。

霜出豊和は、4人の子どもを園に通わせた。妻が入園を決めたものの、初め霜出自身は園の濃密な人間関係をわずらわしく感じていたという。彼はふり返る。

「最初に園で開催された夕涼み会に行った時は、親たちがものすごく盛り上がっていて引いてしまいました。なんでこんなに園や子どものことで夢中になっているんだろうって冷めた気持ちで見ていたんです。

ただ驚いたのは、そういう保護者に限ってうちの娘のことをとてもよく知っているんです。『○○ちゃんのお父さんですね。○○ちゃんって○○してましたよね』と口々に話してくれて、そこには僕が知らない娘の姿まであった。後でわかったんですが、彼らは園に積極的にかかわっていく中で、自分の子どもだけでなく、他の子たちのことにも詳しくなっていたんです。

僕は彼らと話をしているうちに、だんだんと娘のことをもっと知らなくっちゃという気持ちになって園の活動に参加するようになった。そしたら娘はすごく喜んでくれて、友達やその保護者を紹介してくれ、一緒になっていろんなことに取り組んでくれるようになって……」

一列に手をつないでいる子どもたち
写真=iStock.com/maruco
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こうした中で、霜出は他の保護者と交遊する機会が増え、保護者会の活動にも力を入れるようになっていく。その一つが、夕涼み会だ。

「夕涼み会」は地域住民との交流の場

夕涼み会は、夏の休日に開催される。その日の朝、年長の子どもたちは多彩な色の法被を着て手作りの神輿みこしを担いで、近所の健軍商店街を練り歩く。そして商店街の広場に神輿を置き、全員でソーラン節を披露し、集まってきた見物客にチラシを配って園で祭りを行うことを伝える。

園に戻った後は、各クラスの子たちが手作りの大きなステージに立ち、次々と出し物をする。ひょっとこ踊り、寸劇、沖縄のエイサー、和太鼓……。園の内外には、保護者がかき氷、焼きそば、カレー、綿菓子、射的しゃてき、もちろんビールや焼酎などアルコール類を販売する店もある。

園の関係者だけでなく、近所の人たちも毎年楽しみにやってくるので、当日はごった返して人波に押し流されるような状態になる。こうした交流を通じて地域住民にもやまなみこども園のことを理解してもらっているのである。

日が暮れだした頃、ステージで子どもたちの出し物につづいて行われるのが保護者のショーだ。父親たちが「パパレンジャー」と称してヒーローショーを行う、母親たちがハワイアンダンスを踊る、保護者のトリオがコントやヒゲダンスを披露するなどだ。

園に関係のある人もない人も、みんなが仲良くなり、やまなみこども園のことを理解する。