古書には通常の読書にはない楽しみがある。『書物を楽しむ あえて今、紙の本を読む理由』(朝日新書)を出した作家の林望さんは「ヤフーオークションには、江戸時代以前の古い本があれこれと出てくる。しかも多くの場合、古書店で買うよりもかなり安く手に入る」という――。
林望氏
撮影=東川哲也(朝日新聞出版写真部映像部)

古書探しはヤフオクがいいワケ

私が本を購入する際、今はほとんどがアマゾンとか、あるいは「日本の古本屋」とかの、ネット上の仮想的書店で通販として買うことになってしまいました。

なんといってもそれが便利だからですが、反面、昔本屋さんの棚を逍遥しながら、「思いがけぬ脇道の本ども」を発見して立ち読みするということができなくなったのが少々残念ではあります。

また、最近はヤフーオークションで古書を探すということも多くなりました。

ヤフオクに出品されている本を見ていると、私が探しているのと類似の本、あるいは似たコンセプトの本など「おすすめの本一覧」がスーッと出てくる。これはAIが適切に推量して選書してくれているのでしょう。そんな契機で、「ははあ、こんな本があるのか」と知り、取りあえずオークションに入札することもけっこうあります。それは古本屋に行くのと同じ楽しみです。

この、ヤフオクの場合は、必ずその書物の写真が載せられていて、表紙や目次、本文巻頭などが写真で仔細に見られる、中には拡大して詳しく見られるようになっている物もあるので、これは古本屋で実際に手に取って見るのを、ネット上でヴァーチャルに見せているという形となり、それはそれで楽しいものです。

ところが、神保町の古書店のネットサイト「BOOK TOWN じんぼう」では情報がごく少なく、ほとんどは書影が見られないので、あまり面白くありません。

書影写真があれば、その本の摺りの善し悪し、保存状態として汚れているかどうか、虫食いなどの有無なども確認できるのに、タイトルだけなので面白くないし、いい本か悪い本かもわかりません。

古書との出合いが楽しいワケ

古書は、目録やネット上で探して買ってみた場合に、いざ送られてきた実物を見たら、思っていたのと違っていたりして、一向に心に沁み込んでこないこともあります。

以前に古書店発行の目録で買い入れて「さあ読もう」と本を開いたら、もとの所蔵者がよほどヘビースモーカーであったと見えて、本のどのページからも、タバコの臭いがものすごかったりしたこともありました。そんな本は、まことに不愉快で読書どころではないので、直ちに閉じて返品しました。

古書でも、基本は書き込みも何もない方がいい、とこれは一般論として言えますが、でも、なかにはしかるべき学者や研究者が、真摯しんしな勉強をして書き入れをした本もあって、そういうのにはまた別の価値があります。

結局のところ、古本屋の楽しさは、思いもかけなかった本に遭遇する楽しさ、ということもあるかもしれません。

あらかじめ目的のものを探す傍らで、あれこれ眺めているうちにひょっこり出合った本を買って、読んでみたら面白かった。そういうのもまた、本探しと読書の楽しみに違いありません。

そうやって、思いがけぬ良書に巡りあったり、いざ届いたのを見れば、がっかりするような本であったり、結果はいろいろですけれど、いずれにしてもなかなか面白いものです。