ストレスは血糖値を一時的に上げる

もうひとつ無視できないのが、現代社会の特徴でもあるストレスです。ストレスは心だけではなく、体のホルモンバランスにも大きな影響を及ぼします。人は強いストレスを感じると、アドレナリンやコルチゾールといったホルモンが分泌されます。

これらのホルモンには「戦うか逃げるか」という緊急時に備えるために血糖値を一時的に上げる働きがあります。昔なら外敵から逃げるために必要な反応でしたが、現代では仕事のプレッシャーや人間関係の悩みといった逃げ場のないストレスにさらされることで、慢性的に血糖値が高い状態になってしまいます。

世界中で広がる糖尿病ですが、欧米と日本をはじめとするアジア諸国では少し事情が異なります。

あなたは糖尿病患者と聞いて、どんな人を思い浮かべますか? おそらく、太った中高年の男性をイメージすると思います。間違っているわけではありません。実際、欧米では肥満と糖尿病の関連が非常に強く、体重が増えるにつれて糖尿病になる確率が上昇します。

しかし、日本人の場合は、太っていなくても糖尿病を発症します。しかもその多くが、「かくれ糖尿病」と呼ばれ、本人も気づかないまま進行しているケースです。かくれ糖尿病とは、糖尿病であるにもかかわらず、健診などの検査では糖尿病と診断されず、見逃していることをいいます。

「痩せている人」でも糖尿病になる

欧米人と日本人の体質には次のような違いがあります。

欧米人は筋肉量が多く、すい臓から分泌できるインスリンの量が多いため、ある程度体重が増えても、血糖値を正常に保てる余力があります。

一方、日本人は小柄で筋肉量も少なく、すい臓から分泌できるインスリンの量が欧米人と比べると少ないため、欧米人ほど太っていなくても、血糖値が上がりやすいのです。

例えば、欧米人なら体重が100キロを超えても糖尿病にならないことがありますが、日本人は体重70キロ前後でも糖尿病になるケースは珍しくありません。

日本人の場合、「痩せているから自分は大丈夫」という考え方は危険です。むしろ「痩せていても糖尿病」というケースを念頭に置いておいたほうがいいでしょう。それでは、どうしたら、かくれ糖尿病に気づけるのか? その方法については、本書で詳しくお話しします。

糖尿病が怖いのは、血糖値が高いことではなく、その状態が続くことで全身の血管や臓器に少しずつダメージが蓄積し、やがて心不全や腎不全、さらには認知症といった深刻な病気を引き起こすからです。いわゆる合併症の発症です。