演出家は各回の「ミニ監督」である
【監督】演出家は、監督がOKを出した絵コンテを受け取り、絵コンテの意図を正確に汲み取り、アニメーターさんや美術さんと打ち合わせします。そして、あがってきた作画が絵コンテの求めるものになっているかチェックします。キャラクターの表情や芝居、動きのタイミングや構図などが、絵コンテの意図に沿っているか、効果的になっているかチェックし、必要があれば修正の指示をします。
演出家とは、絵コンテを設計図にして、絵や動き(芝居)、色やテンポや間(時間)、音楽や声を使って、その作品をおもしろく見せるショーマンです。監督と同じく、映像制作の全セクションをわかっていなければできません。逆にいうと、わかっているから、絵コンテを描くことができます。だから本来は演出家自身が絵コンテを描くべきなのですが、ここにも忙しすぎるという現実的な問題があり、分業も多く、絵コンテを描く人と演出家が別だということも少なくありません。
【シンジ】なるほどなるほど。だいぶ「演出」という仕事の全体像が見えてきました。
アニメの完成形の絵コンテを描いて、そのとおりの映像になっているかをチェックするのが演出の仕事なんですね。
【ユーリ】本当なら監督が全部やりたいところだけど、無理だから、各話に演出家がいたり、絵コンテだけ描く人がいるわけね。
【監督】そう。いわば各話の「ミニ監督」みたいな存在なんだ。だから、演出から監督になる人が多いんですよ。
1話分は300以上のカットが集まっている
Q シーンとカットって何?
【ユーリ】絵コンテで描いている絵って、何を描けばいいの?
【シンジ】確かにそれ迷った。絵コンテはアニメになる全部の絵を描くわけじゃないですよね?
【監督】1カットごとにキーとなる絵を描きます。
【ユーリ】そもそも「カット」って何?
【監督】カメラが切り替わるまでのタイミングが、カットです。同じ背景が続いていたら、それは1カットということ。たとえば、君を真正面から映しているカメラアングルから、横から映しているカメラアングルに変わったら、それはカットが変わったということです。テレビアニメだと、だいたい1話で300~350カットくらいになるのが標準かな。絵コンテでは、各カットのポイントとなる絵や情報を書いて、そのカットがどういう映像になるかわかるようにします。
【シンジ】そういうことか。
【ユーリ】監督、ついでに「シーン」って何だっけ?
【監督】シーンっていうのは、カットよりも大きな区切りで、1つの場面のことを指します。たとえば、教室の場面から、自宅の場面に変わったら、それはシーンが変わったということだね。
【ユーリ】なるへそ。シーンとカットの区別、曖昧だった!