新型コロナの感染者のうち、どんな人が重症化しやすいのか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「原因は、本来、身体を守るはずの免疫細胞が暴走するサイトカインストームだ。免疫の暴走を食い止めるには、『レギュラトリーT細胞』が欠かせない」という——。

※本稿は、小林弘幸・著、玉谷卓也・監修『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

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「重症化」はICUでの治療が必要な状態

国内における新型コロナウイルス感染症では、感染しても約80%の患者が無症状か軽症で済むものの、高齢者や基礎疾患のある患者を中心に約15%は重症肺炎になり、約5%は致死的なARDS(急性呼吸促拍症候群)という呼吸不全に至ります。

新型コロナウイルス感染症において「重症化」というのは、この5%を指します。

ARDSに陥り、ICU(集中治療室)での治療が必要となった状態です。

重症化から回復しない場合、数日のうちに呼吸不全は呼吸困難へと進行し、深刻な炎症に陥った心肺は機能しなくなるため、ECMO(エクモ)という人工心肺装置を装着。ここまで至ると、残念ながら8割方の患者は命を落としてしまいます。

ウイルスの毒性だけならインフルエンザのほうが怖い

これを聞くと、「新型コロナウイルスはなんと恐ろしい毒性を持っているんだ」と思うのですが、こうした症状の悪化の原因はウイルスの病原性だけではないことがわかっています。

ウイルス単体の毒性でいえば、インフルエンザウイルスのほうがよほど怖いのです。

では、なぜ世界で100万人以上もの方が命を落としているのか?

その答えが、「サイトカインストーム」です。

本来、わたしたちの身体を守るはずの免疫細胞が火の嵐のように暴走し、全身に炎症を引き起こす免疫の過剰反応が、この感染症の重症化の原因なのです。

これは、2020年5月に、量子科学技術研究開発機構理事長で前大阪大学総長の平野俊夫先生によってあきらかにされています。