東北の「ユニバース」は災害支援活動も活発

アークスグループの一角をなす「ユニバース」は、5月1日に岩手県洋野町と「災害時における物資供給に関する協定」を締結した。これで協定締結は累計23自治体に達する。災害時には自社の備蓄倉庫や店舗から食料や日用品を供給する体制を整え、地域社会の「最後の砦」としての役割も果たす。こうした地道な取り組みが、アークスの「信頼される地元スーパー」という評価を支える。

また、日用品や家庭用品など食品以外の分野については、グループの得意領域ではない部分を無理に内製化せず、外部の力を活用する姿勢も特徴だ。例えば、一部店舗ではホームセンター大手のカインズから商品供給を受けており、低価格かつ品質の確かな非食品商品を提供する体制を整えている。これにより、買い物客にとって“ワンストップの便利さ”と“お値打ち感”を両立している。

アークスの店頭
写真=筆者提供
アークスの店頭

なぜ「八ヶ岳連峰経営」なのか

アークスのこれまでの成長を牽引してきたのは、M&Aによる地盤拡大だった。傘下には、ユニバース(八戸市)、ラルズ(札幌市)、福原(帯広市)、そしてベルジョイス(盛岡市)など、多くの地域密着型スーパーが名を連ねる。ベルジョイスは、ジョイスとベルプラスの統合によって生まれた企業であり、岩手・宮城・青森に60店舗以上を展開。地域の食材を生かした商品展開にも定評がある。

横山会長はM&Aを「マインド&アグリーメント」と評する。買収先の「らしさ」を尊重しながら、共通の仕入れ、物流、情報システムなどでコストを抑えている点が特徴だ。

アークスの「八ヶ岳連峰経営」は、決してアークスが頂点に立つのではなく、買収した会社が八ヶ岳のように同じ高さを保ちながら顧客と近い立場で経営を続けている。欧米流に敵対的TOBをかけるような会社とは一線を画す。ベルジョイスは2025年にユニバースと新たな物流拠点「盛岡グローサリーセンター(仮称)」を開設予定であり、より高度な広域供給体制を構築する。

この姿勢は、同業他社との連携にも表れている。アークスは2018年、岐阜県多治見市のバローホールディングス、山口防府市のリテールパートナーズとともに「新日本スーパーマーケット同盟」を結成した。この同盟は、地方に根ざした独立系スーパーマーケット同士が、商品調達や販促、IT活用などで協業し、競争力を高め合う取り組みである。全国展開型の大手チェーンとは異なる「第三極」として、地域性とスケールメリットの両立を図る狙いがある。

規模の拡大を目指す一方で、傘下の企業はあくまで地域密着を貫く。「地元に根ざした“顔が見えるスーパー”」であることが、アークスグループの競争優位性の源泉だ。

強豪ロピアやセコマとどう戦うかが課題

一方で、ロピア(OICグループ)やトライアルなど首都圏資本のディスカウンターが相次ぎ北海道に進出。セイコーマート(セコマ)などの地域密着型チェーンとの競争も続く。インフレ環境下で、売上は伸びても利益を確保するのは容易ではない。

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こうした環境にあって、90歳の横山会長は「納得価格」という経営スタンスに立ちながら、アークスを次のステージへと導こうとしている。「安ければよい」ではなく、「納得して買ってもらえる価格」が、アークスの価格観の根幹だ。横山会長は4月の決算発表会見で「鮮度、おいしさ、安心感――これらを納得できる価格で届ける。それが我々の使命です」と語る。

数字だけでない、地域と人に向き合う経営。それが、北海道・北東北の人びとに長く支持されてきた理由にほかならない。地方から生まれた価格改革の挑戦は、今も進化を続けている。

今後、アークスはさらなるデジタル投資と物流の高度化、人材育成に注力し、競争力の維持と強化を図っていく。横山氏からバトンを受けた猫宮一久社長の下、ネットスーパーやEC強化の先行事例をグループ全体に展開しつつ、地域ごとの特性を活かした店舗運営を継続していく構えだ。