牛丼チェーンの吉野家と松屋は4月、牛丼の価格改定(値上げ)を実施した。並盛については吉野家は価格据え置き、松屋は30円値上げと対応が分かれている。値決めのコンサルティングサービスを手掛ける「プライシングスタジオ」代表の高橋嘉尋さんは「どちらも並盛の価格が『500円を超えない』ように意識しているように見える」という――。

「並盛」で分かれる吉野家・松屋の戦略

2025年4月、吉野家と松屋は相次いで牛丼メニューの価格改定を実施しました。図表1、2のように、両社ともに原材料費や人件費の高騰を背景に価格改定を実施しましたが、吉野家は主力商品の価格を据え置く一方で、松屋は主力商品の価格を引き上げる選択をしています。

なお、繰り返しになりますが、「牛丼小盛」「牛丼並盛」「朝食メニュー」など一部商品については、価格を据え置いています。

【図表2】松屋価格改定詳細表(2025年4月22日実施)
編集部作成

また、同日より一部店舗において、22時から翌5時までの時間帯に注文された商品に対し、深夜料金として7%前後を加算する制度を導入しています。

値上げで購入頻度はどれほど変わる?

松屋が実施した今回の牛めし(並盛)の値上げは、はたして適正だったのでしょうか。価格設定の狙いや消費者への影響を詳しく考察するため、消費者に対する価格感度調査を実施しました。

今回の調査は、単に「消費者がいくらまでなら支払うか」だけでなく、「価格変更による購入頻度への影響」も考慮した精緻な調査となっています。具体的には、牛めし(並盛)の価格が変動した場合に、顧客数や販売数量がどのように変化するのかをシミュレーションしました。

その結果、並盛の価格を「460円~500円」の範囲で値上げした場合、顧客数は約1.3%減少し、販売数量は約0.4%減少するという試算になりました。一方で、売り上げへの影響はポジティブであり、価格を460円に設定した場合、売り上げは約6.60%増加、500円に設定した場合は約15.90%増加することがわかりました。