顧客からのキワドイ意見に店長が返した神対応
店で扱う様々な丸魚から作るため、マルカマのすり身揚げは味が毎日変わる。一期一会の楽しみと言えるが、工業化されて均質化された商品に慣れた消費者と向き合うためには知識に基づいた販売力が必要となる。
ある日、店頭ですり身揚げを売っていたら、上品な老婦人から「こないだ買ったすり身揚げは魚っぽさがちょっと強かったわよ」と声をかけられた。クレームではなさそうだけど、どう答えればいいのかわからない。とりあえず謝ればいいのかな……。すると、筆者の隣で他の作業をしていたマルカマ店長の和田あかねさんがさりげなく接客を代わってくれた。
「そうですよね! うちのはつなぎが少なめで魚がたくさん入っている贅沢なすり身揚げなんです。そのときの魚介類によって味や香りが変わるのも面白くて、タコやイカを入れるときは味が大きく変わります。またぜひお試し下さい」
客の意見を否定するわけでもなく、適当に謝って済ませるわけでもなく、多様な鮮魚を使ったすり身揚げという商品の性質をアピールしている。すごい接客だ。

店長は元水族館スタッフ
東京海洋大学出身の和田さんは学生の頃からダイビングのインストラクターや水族館スタッフのアルバイトをした女性。「魚を見せるだけではなく魚を食べさせる仕事」をやってみたくてマルカマに入った。客として来店したときに上述の狩野さんが食べ方を丁寧に教えてくれて、実際に美味しかったので働くことに興味を持ったという。その経験と経緯があるから、魚好きの客目線に立ちながらも媚びやごまかしのない接客ができるのだろう。
