「鍋が勝手においしくしてくれる」

これらの鍋を使った人たちがファンになるのは、「手間もテクもいらずに、鍋が勝手においしくしてくれるから。厚手なので水分が不必要に蒸発せず、調味料がそれほどたくさん必要ありません。そして、中火や弱火で十分です」と野口さん。つまり、コストパフォーマンスがよいのだ。リーズナブルだが薄手の一般的な鍋は、「火の回り方が均一になりにくいので、調味料が全体にうまく回らず、素材の中まではあまり味が入らないなど、ムラができやすいです」。

キッチンが狭く鍋を1つしか持てないが、日々自炊する人なら、ビタクラフト社などに代表される耐久性の高いステンレス鍋を1つ買えばよい。

一方、いずれも重い、鋳物ホーローの場合は扱いに気を遣うといった問題もあり、手軽にササっと調理をしたい人や初心者には向かない。「1人暮らしであまり料理をしない、フライパン1つでパスタを作る、といった人なら、16センチのステンレス製の片手鍋があれば、麺類や汁物など一通りできます。でも、友達などと一緒に料理して食べる人なら、2人分が余裕で作れる18センチの片手鍋か20センチの両手鍋があるとよいと思います。もし、初めて1人暮らしをするので、まだ料理をどの程度するかわからない、という場合は18センチ程度の片手鍋を1個持てば、野菜や麺類をゆでたり、肉じゃがやみそ汁を作ったりとオールマイティに使えます」と野口さん。

ステンレス鍋
写真=iStock.com/MarioGuti
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調理道具としても皿や器としても使える鍋

アルミは塩味と酸に弱いので、アルミ製の鍋に料理を入れたまま放置するのはよくない。「アルミ製が多い行平鍋は、片手鍋で軽く取り回しがよいので火の回りが速い。野菜をゆでる、ソースを作るといったちょっとした作業に使います。もとは料理人が使っていた『ヤットコ鍋』。『ヤットコ』というハサミを取っ手に使うものでした。火の回りが速くて焦げつきやすい、塩分や酸で黒ずみやすいため、初心者にはあまりおすすめできません。また、アルミ製は熱源を限定するので、購入の際はキッチンの熱源に対応できる素材の行平鍋を検討するとよいでしょう」と説明する。

ル・クルーゼがそうだったように、鍋にも流行がある。ここ数年、人気があるのは、野田琺瑯のすっきりしたデザインの「ココナベ」。大が外径215ミリ、小が198ミリで「1人暮らし、家族が時間差で食事するといった方たちが便利に使っているようです」と野口さん。最近は、こうした調理道具としても皿や器としても使えるキッチンツールが増えている。1人で作って食べる機会が多い人は、検討するとよいのではないか。