鍋を選ぶのは難しい。種類が豊富でサイズもさまざまだ。自分の生活に合った鍋を見つけるにはどうすればいいのか。キッチンツールに詳しいフードスタイリストの野口英世さんは「鍋の場合、大は小を兼ねないので、適材適所で選ぶことが大切」という。生活史研究家の阿古真理さんが取材した――。
2024年8月21日、英国のビスタービレッジにあるル・クルーゼのアウトレット小売店
写真=ロイター/アフロ
2024年8月21日、英国のビスタービレッジにあるル・クルーゼのアウトレット小売店

「鍋の場合、大は小を兼ねない」

立春を過ぎ、日差しが春めいてきた今日この頃。新生活を始める人、また春に向けて気分を変えたい、という人たちの中には、キッチンツールの購入を検討している人もいるのではないだろうか? しかし難しいのは、多彩過ぎる選択肢から何を選ぶかだ。適切な鍋を選ばないと料理しにくいが、選び方次第で料理がラクになり、おいしさもアップする。そこで今回は、キッチンツール選びのエキスパートでフードスタイリストの野口英世さんに、鍋選びの基準を聞いた。

野口さんはまず、「ライフスタイルも求めるものも違う皆さんが、私の話をもとに自分に合った鍋を選んで、使い続けてくださったらうれしいです」と話す。

目安となるサイズは、1人分なら直径16センチ、1~2人分は18センチ、2~3人分は20センチ、3~4人分は22センチ。鍋は大きくなるほど重くなるので、女性で扱いやすさを求めるなら大きめの鍋は両手鍋、ゆでてザルにあげるなど動きが激しい使い方なら、片手鍋がおすすめだ。ただし、「鍋の場合、大は小を兼ねないので、適材適所で選ぶことが大切です」と野口さん。

ル・クルーゼが人気なのは「映えるから」だけではない

材質も、アルミやステンレス、鋳物ホーローなどいろいろあり、目的に合わせて使い分けたい。料理をどの程度するのか、どのぐらい技術があるのか、求めるのはラクさなのかおいしさなのか、など好みとライフスタイルで適切な鍋は違ってくる。

20年ほど前に一世を風靡し、すっかり定着したフランス産のカラフルなル・クルーゼ。鋳物ホーロー鍋なので、金属製のヘラ・たわしでこすればあっという間に傷がつく。強火で加熱すれば焦げつく。そして重い。それでも定着したのは、映えるからだけではない。

「鋳物製で厚手のため、熱ムラが少なく蓄熱性が高い。ふたをしてじっくり煮込む料理に向いています。肉じゃがでも筑前煮でもシチューでも、時間をかけて柔らかく煮込みたい料理がおいしくなる」と野口さんは語る。

同じく鋳物ホーローでフランス発のストウブ、アメリカ発で昭和時代から定評があるステンレスとアルミの多層構造のビタクラフトは、蓄熱性が高く煮込み料理に向く。ビタクラフトは表面がステンレスなので、お手入れもラクだ。ル・クルーゼの鍋は内側が白く調理中の食材が見えやすく、料理がおいしそうに見えます。ただ黄ばみやすいので、気になる人にはストウブがおすすめ。ただしストウブのほうが、同じサイズでもル・クルーゼより重い。そして3社製とも値段は高めだ。