研究者も驚いた「全ての敬語をカットした」角田訳
【山本】角田さんの現代語訳、冒頭はこうですね。「いつの帝の御時だったでしょうか――。」冒頭は「ですます調」の敬語表現ですが、このあとから変わります。
その昔、帝に深く愛されている女がいた。宮廷では身分の高い者からそうでもない者まで、幾人もの女たちがそれぞれに部屋を与えられ、帝に仕えていた。
帝の深い寵愛を受けたこの女は、高い家柄の出身ではなく、自身の位も、女御より劣る更衣であった。女に与えられた部屋は桐壺という。(「桐壺」)。
普通の小説のようにさくさくと読めて、作品世界のなかに入っていけます。普通の現代語訳だったら、「女御、更衣あまたさぶらひたまひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり」を、「女御や更衣といったお妃様がたくさんお仕え申していらっしゃったなかに、最高の家柄ではなくて帝の深いご寵愛を受けていらっしゃる方がいました」というふうに訳しますね。
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