新結合は純利潤を生みだすが一時的にすぎない
もっとも、この純利潤を生み出す力織機に魅了されて、これを導入する事業者が次々と現れたとします。そうすると、繊維製品の生産は増加し、事業者間の競争は激化し、力織機を導入しなかった企業は淘汰されるといった業界の再編が引き起こされます。
そして最終的に、すべての事業者が力織機を使うようになる。そうなったら、企業の純利潤は消滅し、経済は再び「静態的」になるでしょう。
このように、新結合は企業の純利潤を生み出しますが、それは、基本的には、一時的なものに過ぎないのだとシュンペーターは論じています(*5)。
*1 J・A・シュンペーター著、八木紀一郎・荒木詳二訳『シュンペーター 経済発展の理論』(初版)(日経BP/日本経済新聞出版本部)2020年、P97-98
*2 前掲書、P42-44
*3 前掲書、P63
*4 前掲書、P192-193
*5 前掲書、P266-268
1996年東京大学教養学部教養学科第三(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。2001年エディンバラ大学より優等修士号(政治理論)、2005年同大学より博士号(政治理論)取得。特許庁制度審議室長、情報技術利用促進課長、ものづくり政策審議室長、大臣官房参事官(グローバル産業担当)等を経て、現職。