つまらないシミュレーションをしていないか

動く直前までいく人もいます。

「やってみようかな」と考え、半分、腰を上げ、また思い直す人です。

「でもむずかしそうだ。最初はおもしろいかもしれないけど、わたしのことだからきっと飽きてきて、最後は後悔するんだろうな」

懐かしい友人に会いたくなったときでも、「いまは仕事も違うし考え方も違っているんだろうな。すぐに会話が途切れて、結局気まずい時間になるかもしれないな」と悪い結果を想像してしまいます。

せっかくその気になりかけても、シミュレーションしているうちになぜか「動かないほうがいい」という答えに到着してしまうのです。

わたしたちはふつう、楽しい計画を立てたときには楽しい結果だけを予想します。だれかと会って食事をしたりお酒を飲んだりして過ごそうと思えば、「あの店の料理ならきっと喜んでくれるだろう」と考え、「話したいことはいっぱいあるから時間もたちまち過ぎていくんだろうな」と考えます。

これもシミュレーションですが、楽しいシミュレーションは行動意欲をどんどん盛り上げてくれます。

ところが悪い結果を想像する人は、このシミュレーションが変な方向に行ってしまいます。「あの店の料理が気に入ってもらえなかったらどうしよう」とか、「美味しいワインに詳しくなっていて、わたしの好みをバカにするかもしれない」とか、動くことをためらわせるシミュレーションをしてしまうのです。

最後は「出たとこ勝負」と居直るしかない

シミュレーションそのものは、さまざまなビジネスシーンで必要になります。

「なるようにしかならない」と考え、なんの準備もしないで交渉やプレゼンテーションに臨む人はいません。

「相手がこういってきたらこう切り替えそう」
「ここが弱いかもしれないから予備のデータを揃えておこう」
「最悪の展開になったら次回の交渉の約束だけでも取りつけておこう」

そういった事前のシミュレーションを済ませておけば、気持ちの準備もある程度はできてきます。

でも限界がありますね。相手がいるのですから、完ぺきなシミュレーションは不可能です。最後は「出たとこ勝負」と居直るしかありません。

まして自分で思いついた楽しいことや、気持ちが晴れそうなことなら、シミュレーションより実行してみたほうがもっと楽しいし気持ちも晴れるはずです。そこにわざわざ、「でも」とか「もし」といった悪い想像をもち込むのは、行動にブレーキをかけるだけになってしまいます。

青い空の下で建物に囲まれたジャンプするビジネスパーソン
写真=iStock.com/chachamal
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