ジェンダー平等という価値観

「5の理由」は、現代の普遍的な価値観です。さきに秋篠宮家が「ジェンダー平等」という価値観を大切にしておられる事実を紹介しました。このジェンダー平等は、まさに現代における普遍的な価値観ではないでしょうか。

高森明勅『愛子さま 女性天皇への道』(講談社)
高森明勅『愛子さま 女性天皇への道』(講談社)

長年の歳月の中で、多くの人々にゆるやかに受け入れられてきた男らしさ、女らしさを短絡的に否定するということではありません。与件としてある生物的な男女の性別とは区別される、文化的・社会的に形づくられた性差を根拠とした不当な差別はあってはならない、という考え方です。このジェンダー平等という理念に照らして、天皇陛下のお子さまが「女性だから」というだけの理由から、皇位継承資格を否定されるというルールは、とても支持できないのではないでしょうか。

もちろん天皇、皇室については、憲法が保障する「国民の権利」の枠外にあると考えられています。しかし、それはあくまでも「世襲制」「象徴制」という憲法が設けた制度上の要請のほうが、より優先されるという話です。やみくもに例外扱いが認められるということではありません。

天皇、皇室への“別枠扱い”について、憲法学者の佐藤幸治氏は次のように限界づけています。

《それが世襲の象徴天皇制を維持するうえで最小限必要なもの(に限る)》(『日本国憲法論』)と。

ところが、皇位継承資格を男系男子に限定するというルールは、これまで述べてきたように、逆に憲法が設けた「世襲制」を至難にしてしまいます。さらに、先にも述べたように「象徴制」とも齟齬そごするおそれがあります。

そうであれば当然、ジェンダー平等という普遍的な価値観が優先されるべきでしょう。

以上、ここに掲げた5つの理由によって、次代の天皇が敬宮殿下であられるべきことに、疑問の余地はないでしょう。

高森 明勅(たかもり・あきのり)
神道学者、皇室研究者

1957年、岡山県生まれ。国学院大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得。皇位継承儀礼の研究から出発し、日本史全体に関心を持ち現代の問題にも発言。『皇室典範に関する有識者会議』のヒアリングに応じる。拓殖大学客員教授などを歴任。現在、日本文化総合研究所代表。神道宗教学会理事。国学院大学講師。著書に『「女性天皇」の成立』『天皇「生前退位」の真実』『日本の10大天皇』『歴代天皇辞典』など。ホームページ「明快! 高森型録