「パネルシアター」と「ペープサート」

保育士になるには、不断の創意工夫と実践が求められます。トライ・アンド・エラーを繰り返しながら課題をやり遂げる達成感は、子どもだけでなく、大人も知らなくてはならないでしょう。

あるとき「パネルシアター」を作る課題がありました。布を被せた板に、絵を描いて切り取った布を貼ったり外したりして物語を展開する人形劇です。これも知りませんでした。

材料は本屋さんに揃っていました。便利な時代です。セブンスター3箱(1800円)を我慢すれば何とかなります。

お話はみなさんご存知の「浦島太郎」にしました。登場人物を原色マーカーで描いて切り抜き、進め方を練りました。

そうだ、玉手箱も用意しよう。開けてびっくり、太郎を一気に老化させる煙=ひげも要る。待てよ、太郎に扮するおいらは漁師だから釣り竿に魚籠びくが必要だ。腰蓑こしみのもほしいな。あれこれ作っていたら、朝になっていました。

短大への道中、小道具がバッグからはみ出していました。職務質問されないかひやひやでした。

「子どもに参加させたら喜ぶかも」

発表の場では急に思いついて数人の同級生に、カメをいじめる悪ガキ役をお願いしました。おもちゃの日本刀とバットを渡しました。楽しそうに演じてくださいました。

まだまだ試練は続きます。

今度は「ペープサート」とな。

へ? 新手の蚊取り線香ですか。

さに非ず、「ペーパー・パペット・シアター」の略で、紙人形による寸劇だそうです。

初耳です。子どもの遊びの世界の奥深さよ。

歌って楽しめて役に立つ。うーん、どうしようか。

自分のなかの“おっさん”と“幼児”

思案の末、数え歌「いっぽんでもニンジン」(作詞前田利博さん、作曲佐瀬寿一さん)にしました。なぎら健壱さんが歌っています。伝説の名曲「悲惨な戦い」で知られるシンガーソングライターです。

画用紙にニンジンやサンダルの絵を描いて切り抜き、別の紙に数字を書き込みます。

2枚の間に割りばしを挟んで貼り合わせる。

この頃になると、自分のなかに還暦過ぎのおっさんと幼児が同居しているような感覚に陥っていました。

作業を進めるおっさんに、幼児が「そんなんじゃ物足りねえよ。おいらをもっと楽しませてみろや」と注文を付けるのです。

「ふむ、替え歌の歌詞を考えてもらうと言葉への興味が増すな」

おっさんに新たなアイデアが浮かびます。

提示した数字に1を加えた数字で始まる物事を子どもに探してもらおう。

たとえば1人でも忍者。2匹でもサンマ、4枚でも五線紙、5丁でもロケットランチャー、9丁でもトカレフ、10機でも零戦……。

発表の場では、心優しき同級生や教員が不出来であっても笑顔で反応してくださる。

おかげでお調子者は羞恥心など忘れ、身中の幼児とともに「遊び」に夢中になれる気がします。

冷笑でも失笑でも苦笑でも嘲笑でもかまやしません。

「笑われて、笑われて、つよくなる」

太宰治さんも『HUMAN LOST』でそうおっしゃっています。