高すぎる集中力がかえって強みとなる

発達障害で、仕事の環境になじめず苦労している方は多いと思います。でも、私たちの強みを活かせる場所が必ずあります。ASDを持つ人は言葉のニュアンスを理解するのが難しく、場の状況に適した行動をとったり、臨機応変に対応したりすることが苦手です。

その一方で、自分の興味のある分野への関心が人並外れて強かったり、ADHDを持つ人と同様に高い集中力があったり、ほとんどの人が気づかないような細かいことに気づくことができたりします。

1つの主題に非常に長い時間、深く集中することのできるASD気質を持ち、それを活かして活躍した偉人はたくさんいます。ミケランジェロ・ブオナローティ。イタリア盛期ルネサンスの彫刻家であり、画家であり、建築家です。彼は芸術にしか興味を示さず、作業に没頭すると少量のパンとワインしか口にせず、その集中ぶりには周囲の人たちも驚きを隠せなかったと言います。

アルバート・アインシュタイン。ドイツ生まれの理論物理学者であり、言わずと知れた「相対性理論」を見つけたその人です。好奇心が旺盛すぎて、小学校でも「なんで? なんで?」と変な質問を繰り返し、3カ月で小学校をやめさせられてしまったそうです。

その他にも発明王として有名なトーマス・エジソン、万有引力の法則を発見したアイザック・ニュートン、「ひまわり」の絵で有名なヴィンセント・ヴァン・ゴッホなど、ASD気質を持つ偉人は数え上げればきりがありません。

LINEヤフー株式会社は、2017年からモバイルアプリのテスト業務を担当する「テストエンジニア」に、発達障害のあるスタッフを採用しています。発達障害ならではの高い集中力や細かいところにも気づくといった特性は大いに役立ち、成果をあげることができているそうです。細かいところにも気づくことができるのは、テスターとしての大きな強みなのだとか。

林でリラックスして瞑想をしている女性
写真=iStock.com/Akarawut Lohacharoenvanich
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没入できるほど好きなことこそ仕事の役に立つ

このように発達障害の人の持つ特性に着目し、人材を求めている会社は他にもいくつもあります。私たちは、置かれた場所で咲こうとがんばる必要はありません。自分の能力を活かせる場所で咲きましょう。

好きなことならとことん没頭する。発達障害の1つの特性です。私も何かを好きになると徹底的に追いかける癖があります。

私は若い頃、サッカーが大好きでした。関西のJリーグチームの試合は時間が許す限り見に行き、休みの日には練習場にまでかけつけていました。サッカーに関する仕事がしたいと毎日願い、周りにも言いふらしていた結果、ある日、大好きなチームの選手とのトークショーの仕事が舞い込んできました。

しかし、私は臨機応変に対応することが非常に苦手でした。一人粛々とマイク前で読むナレーションとは違い、司会やトークなどの仕事は不得手です。当日、私の司会はグダグダ。トークも決してうまくいったとは言えませんでしたが、イベントは盛り上がり成功しました。

成功したのは、ゲストの選手のお陰です。不器用な私を見て、選手がその場を仕切ってくれたのです。プロの司会としては失敗ですが、仕事としては成功した。それは、サッカーやチームに対する私の熱い気持ちが、彼にしっかりと伝わっていたからです。だからこそ、手助けしてくれたのです。私のマニアックさが仕事の役に立った瞬間です。

あなたも何か好きなものはありますか? あるのなら、とことんのめり込んで没頭してください。