子どものうつ病の約10%は慢性化する

児童・青年期のうつ病は1~2年で軽快することが多いものの、再発する可能性も高いとされます。この年代に発病した抑うつ症の予後調査では、93%は完全寛解したものの、53%は再燃(ぶり返し)が認められました。このため、いったん回復してもそれきりにせず、成人期まで念頭においた対応が必要です。

子どものうつ病の約10%は慢性化すると報告されています。慢性化したケースでは、不安症、物質関連症、パーソナリティ症が根底にある可能性も考えられるため、うつ病の治療だけで症状を完全に消失させるのは難しいと見られます。

治療法が本人に合っていれば半年ほどで回復の兆しが見られますが、回復後、元の生活に戻る際には要注意。数カ月のブランクでも、同級生の輪に戻るのは大変です。また、授業についていくのが困難になるからです。遅れをとり戻そうとがんばって再発することもあります。思ったように成績が上がらないと、ますます自己肯定感が下がります。

もちろん、そうしたハンディを乗り越えていく子もたくさんいますが、回復後も思春期特有の問題があることは周囲も認識しておきましょう。

【図表4】とくに急性期にしてはいけないこと
出所=『思春期の子の「うつ」がよくわかる本』(大和出版)P88

子どもの場合は薬物療法が第一ではない

大人のうつ病の場合、休息と薬物療法が中心ですが、児童・青年期のうつ病では薬物療法が第一ではありません。

子どもの場合、薬物療法を積極的には行わない臨床試験によると、児童・青年期のうつ病に対する抗うつ薬使用は大人ほど有効ではなく、とくに三環系は有効性が確認されていません。SSRIの有効性は実証されていますが、効果が得られないこともあります。また、小児・思春期では自殺関連行動のリスクが高まるという問題もあります。

いずれの薬剤も子どもの場合、日本では臨床試験で有効性・安全性確認されておらず、保険適用ではないので積極的に用いることはできません。このため児童・青年期のうつ病には原則として、まず精神療法や環境調整、心理療法を行います。この時期のうつ病は、背景要因を探り、解決をはかることで改善することも少なくないのです。

過度の抑うつや精神運動抑制、不眠がある場合には、薬物療法も検討します。重度のうつや自殺の危険があれば入院治療も選択肢となります。

薬物療法を行う場合、小児には不安や焦燥感、パニック発作、不眠、易刺激性、敵意、衝動性、アカシジア(そわそわと動き回る)、軽躁状態、躁状態などが生じやすく、服用後2週間以内はとくに注意が必要です。

薬物療法のリスクを本人や親御さんに説明し、慎重に投与します。