多角的に疑うためのアプローチ方法

疑うことを悪いことだと思っていると、思考力を高めることはできません。しかし、何でも疑うことも、思考力を高めるとは言えません。

私たちに必要なのは、多角的な視点で物事を疑うことです。

「多角的に物事を疑う」とは、異なる視点から情報や主張を検討し、その信憑性や論理的整合性を評価することです。このアプローチでは、一面的な見方に囚われず、多様な視点から物事を考察し、より深い理解と合理的な判断を目指します。

多角的に疑うための具体的なアプローチを4つ紹介します。

・ 異なる情報源を探索する:同じトピックについて、異なる情報源からのデータや意見を収集する
・ 背景を理解する:主張されている内容の背景や文脈を理解し、その影響を評価する
・ 仮説を設定し、検証する:物事の解釈に対する仮説を立て、証拠をもとに検証する
・ 論理的思考を適用する:論理的に一貫した推論を用いて、情報の妥当性を評価する

例えばプレゼン資料を作るときや、会議やミーティングを行うとき、社内の問題点を洗い出して解決法を探るときなどには、疑う思考を使いながら取り組んでいきます。

オフィスで問題を解決する忙しい男
写真=iStock.com/GaudiLab
検証して仕事に取り組む(※写真はイメージです)

1人で疑う思考を使うにせよ、他者との会話で使うにせよ、疑う思考を活用するにあたって、知っておいてほしいことが1つあります。それが、「非難」と「否定」そして「批判」を区別することです。疑う思考は、非難や否定とは一線を画するものであることを知っておきましょう。

「非難」をいろいろな辞書で引いてみると、「人の欠点や過失などを取り上げて責めること」と書かれています。非難には、人を傷つけようという意思があります。悪口や愚痴、誹謗中傷、失敗を責める、けなす、攻撃するという行為が非難です。

他人だけでなく、自分に対しても「私はバカだ」「私はダメなやつだ」と自分を攻撃をすることがあります。これは自己非難です。

誰かに「だからお前はダメなんだ」と言われたとき、その発言に対して多くの人は「ありがたいな」「学びがあるな」とは思わず、ただ傷ついてしまうのではないでしょうか。他者に対しての非難はもちろん、自分に対しての非難も生産性がなく、そこからは何も生まれません。

著名人のSNSが炎上し、コメント欄に否定的なコメントが殺到するという事態は頻繁にありますね。中には目を覆いたくなるような酷いコメントもあったりします。匿名で送られてくるこうしたコメントのほとんどが「非難」です。

続いて「否定」についてです。「否定」をいろいろな辞書で引いてみると、「そうではないと打ち消すこと。また、非として認めないこと」とあります。否定は、「○○さんに仕事を頼んでも仕方ない」「指摘しても変わるはずがない」というように、相手のことを見極めることなく自分本位に決めつけてしまっている状態です。

非難と同じく、否定も自分に対してしてしまうことがあります。「どうせうまくいかない」「どうせ成功しない」というような場合を自己否定していると言います。