私たちホモ・サピエンスはなぜネアンデルタール人との生存競争に勝てたのか。国際医療福祉大学病院予防医学センター教授の一石英一郎さんは「ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの明暗は野菜を食べるかどうかで分かれた」という――。

※本稿は、一石英一郎『予防医学の名医が教える すごい野菜の話』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

ネアンデルタール人は滅びホモ・サピエンスは生き残った

野菜と人間の歴史は実は深い。私たち人間は、野菜の生存戦略を利用して生き延びてきた。遺伝子を研究し、予防医学に取り組んできた医師が、なぜ私たちは野菜を食べるべきなのかを科学的に解説する。ホモ・サピエンスが生き残り、ネアンデルタール人が滅んだ決め手も野菜だったという。

野菜
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長い間並行して存在していた

私たち人類、すなわち学名でいうところのホモ・サピエンスが、地球の長い歴史の中で現在に至るまで生き延びることができているのは一体どうしてか。ネアンデルタール人との生存競争に勝った理由―両者の勝敗を決した核心が、「野菜を食べていたかいなかったか」にあったとしたらどうでしょう――。

この驚きの謎を解明すべく、順を追って説明していきたいと思います。

ホモ・サピエンスは、太古にサルから進化したヒト属の中で唯一、現代まで命脈を保っている種族です。しかし太古から続く歴史の中では、ホモ・サピエンス以外にも、アウストラロピテクス、ホモ・ハビリス、ホモ・エレクトスなど、この地上で繁殖し、そして滅んでいったさまざまなヒト属がいました。ネアンデルタール人もそのひとつです。

2022年のノーベル生理学・医学賞は、ネアンデルタール人のゲノム解読に成功したグループが受賞しました。それによると、ホモ・サピエンス固有のゲノム、すなわちネアンデルタール人とは異なるゲノムは、わずか7%以下とされています。ネアンデルタール人とわれわれ人類は、驚くほど似通っているということです。

それでいて、かたや滅亡、かたや繁栄で今に至ります。この差はいったい、どこから生じたのでしょうか。

順序からいうと、ネアンデルタール人が絶滅した後に、現生人類であるホモ・サピエンスが登場したかのように捉えられがちですが、実際にはこの両者は、かなり長い期間、並行して存在していました。