職場でニコッと笑えたら成功したようなもの

「そう言われても、どんな言葉を返したらいいか……」
「言葉が見つからないのであれば、表情でもいいんです。少しニコッとしてみるだけでも相手が受け取るイメージは大きく変わりますよ」
「普段ニコッとするなんて、職場でやったためしがないから、それも難しいなぁ……」
「Iさんは、上司からどんな言葉をかけてもらうとうれしい、気分がいいですか?」
「う~ん、『ありがとう』とか『よくやってるね』とかでしょうか……」
「それなら、まずはそれから始めてみるのはいかがですか?」

このようなセッションは数カ月におよびましたが、Iさん自身、「与えられた仕事はやって当たり前」という価値観が長年染みついていたこともあり、自身の行動や立ち振る舞いをなかなか変えられずにいました。

でも、ある日のこと。職場がバタバタと忙しい中、電話を受け取ってくれた社員に対して、ニコッとした笑顔と、「ありがとう」という言葉を口にしてみたそうです。すると、「今まで職場でそんな言葉を返したり、表情を見せたりしたことがなかったので、社員にはキョトンとされてしまいました」とIさんは照れくさそうに打ち明けてくれました。

ただ、思い切って行動に移すと、Iさんの中で殻が破れたのか、「ありがとう」と口にすることや笑顔が多く出るようになり、気づいたら業績も自然に上がっていたそうです。

会社のミーティングで拍手をする人たち
写真=iStock.com/Martin Barraud
※写真はイメージです

このIさんにかぎらず、「ありがとう」といった言葉や「笑顔」などの良い表情をアウトプットすることに慣れていない人が、職場やチームの中でいきなり実践するのは難しいことだと思います。

吉岡眞司『強いチームはなぜ「明るい」のか』(幻冬舎新書)
吉岡眞司『強いチームはなぜ「明るい」のか』(幻冬舎新書)

しかも、プラスの言葉を口にするメリットについては、さまざまなところで言われていて目新しくもないので、特に大学生や社会人にもなると、「そんなことは知っているよ」と斜にかまえ、馬耳東風に聞き流す人が多くいます。

たとえ知っていることであったとしても、これまでの価値観や先入観を一旦は横に置いて、まずは素直に取り組んでみる。これに尽きます。特に、管理職やリーダーの行動が変わると、チームにもたらすインパクトは大きなものがありますから。

この記事を読んでいる方の中にも、チームリーダーやチームの主軸を担う立場の方がいるでしょう。そういった人は、チームの雰囲気を一気に明るくできるパワーを持っています。ぜひ、プラスの言葉や表情、態度を意図的にアウトプットし、率先して「明るいチーム」づくりを行ってみることをお勧めします。

吉岡 眞司(よしおか・しんじ)
人財教育家・メンタルコーチ

慶應義塾大学卒。人財教育家、慶應義塾体育会野球部・慶應義塾高等学校野球部人財育成・メンタルコーチ、一般社団法人能力開発向上フォーラム代表理事、SBTアスリートメンタルコーチ&1級メンタルコーチ。メンタルコーチを務める慶應義塾体育会野球部が第70回全日本大学野球選手権記念大会にて34年ぶり4回目の日本一、慶應義塾高等学校野球部が第105回全国高等学校野球選手権記念大会にて107年ぶり2回目の日本一、箕面自由学園高等学校チアリーダー部がJAPAN CUPチアリーディング日本選手権大会にて4年連続24回目の日本一に輝くなど、実績多数。