姓の問題は人権問題である
今回の第三次集団訴訟では、6月27日に第1回の裁判期日が開かれ、原告・弁護団の主張が展開された。今後、国からの反論、弁護団からの再反論と、主張のやり取りが繰り返され、原告の尋問へと進んでいく。最終的に最高裁で判決が下るまでには数年がかりの長期戦になるが、弁護団長の寺原さんはこう語る。
「これは、どちらの制度がベターかといったレベルの話ではなく、基本的な人権が侵害されている、人権問題です。訴訟は国会が動かないためにやむを得ず起こしたもので、本来は最高裁の判断を待つことなく、国会が自ら法改正に向けて動くことが求められています。国会を動かすためには世論を喚起し、機運を高めることが大事ですが、最高裁が『合憲』とした後も、社会の状況は刻々と変化し、世論はさらに高まっています。特に今年に入ってから経団連が選択的夫婦別姓制度の早期導入を政府に求めたことは、大きな後押しになると感じています」
編集部が行った調査では、男性回答者が6割を占めたにもかかわらず、選択的夫婦別姓を望む声、容認する声は男女ともに高まっている。
夫婦別姓は、かつてジェンダーの問題と捉えられがちだったが、本来は基本的な人権の問題である。経済合理性の観点からも関心が高まる中で、選択的夫婦別姓の導入に向けて、いよいよ追い風が吹いているよう。自身の姓についてさまざまな思いを抱き、中には喪失感を抱えたまま人生を終えた女性もいるという――。選択的夫婦別姓への50年の闘いの行方を見守りたい。
1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、出版社の編集者を経て、ノンフィクションライターに。スポーツ、人物ルポルタ―ジュ、事件取材など幅広く執筆活動を行っている。著書に、『音羽「お受験」殺人』、『精子提供―父親を知らない子どもたち』、『一冊の本をあなたに―3・11絵本プロジェクトいわての物語』、『慶應幼稚舎の流儀』、『100歳の秘訣』、『鏡の中のいわさきちひろ』など。