先進国は女性役員が30%以上いるのに、日本はいまだに13%

それでは、わが国においてどのような仕組みを運用することができるのでしょうか。重要な仕組みの一つとしては、やはり女性役員の登用を通じて組織不正への対策を強化することであると感じます。

わが国では、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023(いわゆる「女性版骨太の方針2023」)」において、女性役員の登用を加速することがうたわれています。特にプライム市場上場企業において女性役員比率を高めること、すなわち次に示す3点が大きな目標とされています。

1)2025年を目処に、女性役員を1名以上選任するよう努める。
2)2030年までに、女性役員の比率を30%以上とすることを目指す。
3)上記の目標を達成するための行動計画の策定を推奨する。

こうした背景から、わが国ではプライム市場上場企業において女性役員の割合が増えてきました。2022年では11.4%であった数値が2023年では13.4%となるなど、2%増となっています。

しかし、女性役員の登用を早くから進めてきた欧米諸国と比べると、まだまだ大きな差があるというのが現状です。内閣府男女共同参画局のまとめによれば、2022年を軸に比較してみると、「日本を除くG7諸国の平均」が38.8%、「OECD諸国の平均」が29.6%となっており、大きな違いがあることが分かります。

「女性役員の登用が不正行為を防ぐ」というデータがある

取締役や監査役とは、経営の根幹を担う役員であると思います。しかし、それが男性的な「正しさ」で固定化されてしまうと、なかなか変化しにくくなり、結果的に組織不正をもたらしてしまうことになりかねないと思います。

これは何も私が感覚的にそう思っているのではなく、様々な研究結果で示されていることでもあります。ここでは、女性役員と銀行不正の関係を論じているバーバラ・カスの研究を紹介したいと思います。カスは、欧州大手銀行の取締役会の多様性とこれらの銀行が米国政府から科せられる罰金の関係を調べています。

その結果分かったのは、女性役員の割合が多い企業の方が、不正行為に対する罰金額や頻度が減っており、平均して年間784万ドル(約12億7千万円)を削減しているという事実です。